ここから本文です

全てのカタチには意味がある~「河森メカアニメの秘密」セミナーレポート

6/11(火) 14:19配信

CGWORLD.jp

4月16日(火)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターにて、「アニメ制作ワークフローセミナー第19弾『河森メカアニメの秘密』」が開催された。セミナーには河森正治監督とサテライトの後藤浩幸氏、森野浩典氏、原田 丈氏が登壇。新しいアイデアを生み出す発想法と、それをどのようにCGとして表現していくのかを解き明かした。

デザインはコンセプトが9割5分

同セミナーは、アニメ制作技術に関する総合イベント「あにつく2019」と、河森正治監督プロデビュー40周年を記念した展覧会「河森正治EXPO」の連動企画である。第1部では「『ザ・デザイン』 ―発想からフィニッシュまで―」と題して、河森監督が自身の創作術を披露した。

河森監督は原作・企画・脚本など幅広い役職に関わっているが、キャリアの始まりはデザイナーであり、その経験や発想があらゆる仕事に役立っていると語る。デザイナーは視覚的な設計だけに関わると思われがちだが、河森監督はデザインを「作品のコンセプトや人間の感情や欲求、自分が表現したいテーマなど、目に見えないものをカタチにする仕事」として捉えており、世界観やストーリーを設計することもデザインの範疇に含まれる。

優れたデザインを生み出すためには「全てのカタチには意味がある」という視点をもち、「なぜこんな風になったのか」という原因や理由、その効果を追究する好奇心が何よりも重要だと説く。「例えば......」と河森監督は机上のペットボトルを手に取り、この形状やボトルの凹みにも様々な理由があることを説明した。

デザインは物事の普遍的な原理の上に成り立っているため、デザイナーは自然科学はもちろん人間の心理までも知っておかなければいけない。それを理解した上でデザインの感覚をあらゆる分野に応用すれば、急激な時代の変化にも対応できるはずだと伝えた。

セミナーでは河森監督の代名詞と言える「変形メカ」についての話題が多く飛び出した。「変形メカをデザインするときに一番重要なのは変形機構ではなく、何を変形させるのか」であり、同じコンセプトばかりやっていても面白みがなくなってしまう。その一例としてTVアニメ『交響詩篇エウレカセブン』(2005)のメカニックデザインを挙げた。

主役メカのニルヴァーシュは当初「自動車型から変形する人型戦闘ロボット」という発注だったが、河森監督は自動車の変形を何度も手がけていたため悩んだそうだ。そこで世界観をリサーチしたところ、トラパーと呼ばれる架空の粒子によって船舶が空を飛ぶ設定があると知り、「ロボットがトラパー粒子でサーフィンをするのはどうだろうか?」と提案。それが現在のデザインに繋がった。

河森監督は「サーフィンをする人型ロボットというコンセプト自体がデザイン」であって、「コンセプトが決まるかどうかが、デザインの9割5分だと思っている」とまで口にする。そこからの作業はスムーズで、サーフィンの見映えが良いように手足を細長くしてポーズを取りやすくする方針が決まり、コクピットは弾が当たりにくい後部に配置することでスポーティな外観が完成した。

しかし最新作の映画『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』では「サーフィンに代わる特徴がほしい」とそのコンセプトを禁じられてしまう。河森監督は困惑したものの「そういった制約はデザイナーとしては面白い」と創作意欲をかきたてられたという。今回は発注書の「とにかく巨大」という注文を手がかりに、「ロボットを竹馬に乗せる」というコンセプトを導きだした。さらに巨大すぎて簡単には浮かないだろうと考えて、トラパー粒子を収束するシステムを頭上に配し、「操り人形」のようなイメージも漂うデザインとなった。

1/3ページ

最終更新:6/11(火) 14:19
CGWORLD.jp

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事