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全てのカタチには意味がある~「河森メカアニメの秘密」セミナーレポート

6/11(火) 14:19配信

CGWORLD.jp

白紙のコンテで伝えたかったこと

第2部では「河森作品における3DCGの関わり方」と題して、サテライトデジタル部のCGディレクターである後藤氏、森野氏、原田氏が登壇。まずは森野氏が『マクロスΔ』(2016)を題材に、河森メカをどのようにモデルへ落とし込むのかを解説した。

『マクロスΔ』に限らず、河森作品ではメカデザインを基にレゴブロックで機体を作成し、それをモデリングするという手法が採られている。モデリングの制作期間は1体につき6ヵ月から9ヵ月と長期に及ぶが、それは河森メカには「完全変形」が求められるためだ。単に「3D上で完全変形ができればOK」というものではなく、玩具になったときの耐久性なども考慮しなければならないのだ。

森野氏は「それは玩具メーカーが考える仕事ではないのか?」と徹底的につくり込むことに懐疑的だったと告白する。だが実用性を考えてモデリングをすることによって、クオリティが増していくことを実感し、次第に考えが変わっていった。河森監督はモデリングについて「100パーセント設定に合わせた監修をしないことがポリシー」であり、「モデラーの良さを必ず残すようにしている」とコメントした。

スタッフの個性を重視するという方針は絵コンテにも表れており、原田氏は『重神機パンドーラ』(2018)第1話の担当シーンで「絵コンテのままではなく、好きにしてもいい」と指示を受けたと語る。その言葉を受けて、主人公のレオンが多重次元アタックを決める見せ場では、パンチの数を1発から2発に増やすという変更を加えた。

河森監督は自由にまかせた理由について「僕が20代だったころは何でも変えることが基本だったので、そうしないとスタッフは楽しくないのではないか」と感じているからだと打ち明ける。そのためコンテを描くときは意図を読みやすくすることを心がけており、信頼できるスタッフには「意図の範疇なら何をやってもいい」と伝えるという。

さらに『マクロスF』の制作時にはコンテの指示通りの作業しかしないスタッフを奮起させるため、「誰も見たことがない激しい戦闘」という文字だけ書いた白紙のコンテを渡したこともあったという。作品世界の根底さえ守っていれば、どう表現するのかはクリエイターの自由であり、「せっかく作品に参加しているんだから、その人の個性が反映されていないと意味がない」と力強く語る河森監督の思いが伝わってくるエピソードだった。

セミナーのラストでは5月31日(金)から6月23日(日)まで行われる「河森正治EXPO」の30秒PVが上映された。「河森正治EXPO」では40年に及ぶキャリアで携わってきたデザイン画や絵コンテ、企画書、シナリオ、アイデアノートなどを展示。さらに河森監督自身が長年実現したかったというドーム映像も上映される。一体どんな映像に仕上がっているのか。開催が待ち遠しくなるセミナーとなった。

高橋克則

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最終更新:6/11(火) 14:19
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