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海に捨てられたプラスティックが、酸素を生み出すバクテリアを“殺す”かもしれない

6/11(火) 8:11配信

WIRED.jp

地球はプラスティック問題に悩まされている。大きなプラスティックの塊が太平洋に蓄積しているだけではない。小さなプラスティックのかけらであるマイクロプラスティックが、人間の手のつかない自然のままの山頂の動植物の生息地にまで吹きつけている。

世界で最もプラスティックゴミの密度が高い場所は?

小さなかけらはさまざまな海の生物の中でも見つかっている。人間の排泄物の中でも見つかっているのだ。

そしていま、科学者たちはプラスティックの脅威はさらに新しい危険をもたらしうると警告している。プラスティックが海水中に滲出させている有毒物質が、バクテリアの一種であるプロクロロコッカスの成長と光合成効率を阻害しているというのだ。

プロクロロコッカスは、わたしたちが呼吸する酸素の約20パーセントをつくり出すと考えられている。つまりプロクロロコッカスは、地球上の炭素捕捉の20パーセントを担当しているということでもある(炭素分子1個を捕捉して酸素分子1個を排出する)。そして大気中の二酸化炭素を増やさないようにしようという人類の努力に対し、プラスティックが滲出させる有毒物質は問題をもたらしていることになる。

このほど発表された研究結果は初期段階のもので、但し書きの多いものである。そしてプラスティック公害のような新しい、そして偏在する公害の研究の難しさも明らかにしている。

プラスティックから出てくる「浸出液」

プロクロロコッカスは、世界中の海に漂っている藍藻の一種だ(藍藻という名の由来は、その青っぽい色からきている)。地球上の個体数が10の27乗と見積もられている単細胞生物については、多くが語られている。プロクロロコッカスは、植物と同じように炭素を吸収し、酸素を吐き出す光合成で食べ物をつくり出しており、人間が制御不能なものにしてしまった炭素循環の主役となっている。

だが、プロクロロコッカスは炭素だけではなく、「浸出液」と呼ばれる水中に滲出したプラスティックの有毒物質も吸収していることが今回の研究でわかったという。この研究では、研究室において人工的につくった海水にさまざまな量のプラスティックを混ぜ、その中でプロクロロコッカスを育てた。そして、有毒物質を混ぜていない人工海水を対照群として、結果を比較した。

その結果、滲出液の濃度に応じて明らかな反応の違いが生じた。毒性に対する反応を示すものだ。滲出液の濃度が比較的低いサンプルでは、対照群との違いはなかった。しかし、浸出液の濃度を高くするにつれて、プロクロロコッカスの生理反応はおかしくなっていった。

「プラスティックの浸出液の濃度が高くなると、細胞が成長しなくなり、最高濃度では死んでしまうことがわかりました」と、この研究の結果を明らかにした論文の共著者であるオーストラリアのマッコーリー大学の微生物海洋学者リサ・ムーアは語る。

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最終更新:6/11(火) 8:11
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