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JR東は「車輪のやすり掛け音」、東京ガスは「ガスバーナーの燃焼音」 企業特有の音がいまネット配信されるワケ

6/11(火) 17:00配信

日経クロストレンド

 YouTubeなどの動画配信サイトで、若者を中心に人気が高まっている“音だけ”の「ASMR動画」。それを企業プロモーションに生かす動きが出てきている。キーワードは「自社だけが持つ、知られざる音」だ。

 「ASMR」とは「Autonomous Sensory Meridian Response」(自律感覚絶頂反応)の略で、聴覚や視覚への刺激に、ぞくぞくしたり心地よさを覚えたりする感覚。ASMRを呼び起こす刺激に明確な定義はないが、音では、何かを食べているときのそしゃく音、たき火の薪がパチパチとはぜる音、布と布が擦れ合う音などが代表例と言われる。

 最近では、湖池屋がASMR音源を使った若者向けのプロモーション「スコ音BEATMAKER」を開始して話題を集めた。これはスコーンをそしゃくするときの独特の音を「スコ音」と名付け、スコ音だけで音楽を作れるWebサービスだ(関連記事「若者に受けたスコーンのそしゃく音 湖池屋が使った『ASMR』とは」)。

 このASMR音源を企業のブランディングに生かす目的で、2019年3月に立ち上がったレーベルが「SOUNDS GOOD」だ。オーディオブック配信のオトバンク(東京・文京)と、博報堂の100%出資子会社のQUANTUM(東京・港)が運営する。

 SOUNDS GOOD立ち上げと同時に、東京ガス、JR東日本、ロボットなどの開発・製造・販売を手掛けるユカイ工学(東京・新宿)の3社が音源を公開した。東京ガスは、さまざまな工業用ガスバーナーの燃焼音、JR東日本は山手線大塚駅周辺の店舗の雑踏音や山手線の車輪のやすり掛けをする音など、ユカイ工学は3Dプリンターの駆動音などを無料で配信。音声コンテンツの企画はQUANTUM、録音と配信はオトバンクが行い、音源やアートワークの制作費用などは全て音源を提供する企業持ちだ。

●今はノイズも選ぶ時代

 SOUNDS GOODを立ち上げたQUANTUMとオトバンクがASMRに目を付けたきっかけは、ネットを中心に若い世代に人気が高まっていたことだという。QUANTUMの安藤紘氏は「今は、音楽はもちろん、ノイズさえも好きなものを選ぶ時代ということでしょう。世の中に動画や静止画など、目に訴えかけるものはたくさんあるけれど、音はまだ少ない。気に入った音源は繰り返し聴いてもらえるから、企業ブランディングにはいいはず」と話す。

 オトバンクの久保田裕也社長は、オーディオブックという形で音を使うコンテンツを提供してきた立場から、スマートスピーカーの登場や、Spotifyのような音楽ストリーミングサービスの影響を指摘する。「これらの登場で、日常的に音声を聞く環境が整ってきたのではないか」(久保田氏)

 2人の考えに賛同したのが、実際に音源を提供した東京ガスの暮らしサービス事業推進部サービス開発グループWebサービス開発チームリーダーの榎本奈津子氏だ。東京ガスでは、17年7月に、オトバンクが運営するオーディオブック配信サイト「FeBe(フィービー)」(18年3月に「audiobook.jp」と改称)で、「Furomimi(フロミミ)」というサービスを提供した。これは、入浴中にオーディオブックを楽しもうという提案。ヨガや風呂でできるストレッチ、英語のリスニングなど、入浴中に聴くのに適したオーディオブックを中心にラインアップし、配信した。このときに、「映像や写真とは違うアピールの可能性を感じた」と榎本氏は話す。

 フロミミに取り組んだきっかけは入浴に関する調査だったという。「今はシャワーだけで、お湯につからない人も多く、入浴時間が短くなっている。少しでもリラックスして入浴してもらいたいという思いで実施した」(榎本氏)。そこで、ガスを使うシーンは音との親和性が高いと気づいた。風呂はもちろん、料理などもそうだ。こうしたシーンでは、手がふさがってても耳は傾けられるからだ。

 特に若い世代へのアピール効果に期待を寄せる。テレビやネットの広告などと比べると、マーケティングの効果は測りにくいが、「若い人たちとつながるにはマス向けの取り組みをしても刺さらないから」とあえてASMRを選んだ。「ガスは生活に不可欠だが、目に見える製品やサービスがあるわけではないのでイメージを持たれにくい。これを機に、東京ガスに関心を持ってもらえれば」と期待を寄せる。

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最終更新:6/11(火) 17:00
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