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東南アジアの空を巡る果てなき消耗戦

6/11(火) 18:00配信

日経ビジネス

 東南アジアの航空会社の業績が揃って低迷している。市場は拡大しているものの、価格競争は激しい。業界では再編機運も高まるが容易には進まない。各社の身を削る値下げ競争は今後も続くのだろうか。

 マレーシアに本拠を置く域内最大の格安航空会社(LCC)、エアアジア・グループが5月29日に発表した2019年1~3月期の連結決算は、純利益が前年同期比で約9割減少した。前期同期に子会社の売却益を計上した反動や、新しい会計基準の導入でリース償却費用が膨らんだことが主因だが、座席当たりの旅客収入も低迷しており、値下げ競争の激化が利益を圧迫した。タイ国際航空やバンコク・エアウェイズ、シンガポール航空も前年同期比で減益となり、タイのLCC、ノック・エアラインズは最終赤字を計上した。

 マレーシア航空に至っては経営難に陥っており、マハティール首相は売却や解散の可能性について言及している。現地メディアによれば、同社CEO(最高経営責任者)は3日、解散に否定的見解を示したうえで、他社や機関投資家の支援を受け入れながら再建を進める方針を示している。

国際航空運送協会(IATA)の報告書によれば、旅客数と飛行距離を掛け合わせて算出する「有償旅客キロ」と呼ばれる指標で、2018年に最も高い伸びを示したのはアジア太平洋地域だった。市場は広がっているにも関わらず、各社は業績を悪化させている。

●東南アジア航空業界の「アマゾン」

 LCCの拡大がその背景にある。豪州の航空関連シンクタンク、CAPAによれば、東南アジアはLCCの成長が他の地域に比べて当初は遅れ、20年前までは2社のみが運航していたという。2000年代に入ると急速に存在感が高まり、座席数は08年から18年の10年で4倍になった。相次ぐ新規参入により旅客機の数は過剰気味となり、各社は収益を確保するのが困難になった。

 この競争を巻き起こしたのが2001年に事業を始めたエアアジアだ。「先行者メリットを最大限生かし、他社に先んじて市場を抑えるのに成功した」(タイ大手銀、カシコン銀行リサーチセンターのシワット・ルアンソンブーン・アシスタント・マネージングディレクター)。空港での滞在時間を限りなく短くして駐機料を節約しつつ、1機当たりの運行本数を増やすノウハウを蓄積するエアアジアに対抗するため、競合は利益を犠牲に座席を埋めざるをえない状況に陥った。

 しかもエアアジアは本拠地マレーシア以外の市場では自身も利益を削って業容を広げている。2018年通期の地域別の税引き前損益を見ると、マレーシアでは前の年比で増加しているもののタイでは大幅減に、さらにフィリピン、インドネシア、インド、そして日本では赤字を計上している。

 その事業モデルは、インターネットを主戦場とする企業と似ている。勝者総取り傾向の強いネット市場では、利益の確保より事業拡大に向けた投資を優先する傾向がある。これにより米アマゾン・ドット・コムのような企業は世界各地に足場を築くことに成功した。エアアジアも母国市場の収益と高い効率を武器に、赤字を厭わず各国市場に打って出てシェアの確保に動く。これにより追い詰められた競合を買収できれば、収益基盤を確保することは容易になるだろう。

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最終更新:6/11(火) 18:00
日経ビジネス

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