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ナダルも皆も----彼の力を疑うことはもうやめるべきだ [男子テニス]

6/12(水) 7:31配信

テニスマガジンONLINE

 今回はほぼ1ヵ月ほどの間、ラファエル・ナダル(スペイン)自身でさえが自分がもうひとつフレンチ・オープン・タイトルを獲る可能性について疑念を抱いていた。

フレンチ・オープン2019|トーナメント表

 そして、彼はひとりではなかった。その部分は別に目新しいことではない。

 人々は何年にも渡り、いつ彼の身体が壊れるのか、いつ彼の信じがたいようなロラン・ギャロスでの成功の疾走が終わるのか、いつクレー王者の頭から王冠を払い落とすための技術、強さ、スタミナを持ったほかの誰かが現れるのか、といぶかりながら彼を疑ってきた。

 今回、真の不安を抱えていたのはナダル自身だった。彼は一大会にも優勝することなく5月に入ったのだが、それは2004年以来起きていなかったことだ。

 彼は右膝の故障のため昨シーズンの終わりを棒にふり、オフシーズンには足首に手術を受けなければならず、それから3月には膝に腫れが出たため大会を棄権しなければならなかった。長年にわたり生じ続けている健康の問題は、今や積み重なっていた。

「ここ18ヵ月にあまりに多くの問題があった。だからこそ、ここ数週間は非常に特別なものとなったんだ」とナダルは日曜日の夜にようやく言うことができた。

「精神的に僕は落ち込んでいた。肉体的にも精神的にも」と彼は右手の指でこめかみを叩きながら心境を明かした。

「でも僕は常に、よりメンタル面に注意を払っている」

 彼が語っている不安や苦悩は、ドミニク・ティーム(オーストリア)に対して手堅い決勝をプレーし、第3セットが始まるや11ポイントを連取することで 可能な限り素早く突破口を開き、最後の14ゲームのうち12ゲームを取って6-3 5-7 6-1 6-1で勝利をおさめたナダルを見ていた皆にとって、見当違いであるように見えた。

 その勝利は、通算12回目のロランギャロス・タイトルと、総じて18勝目となるグランドスラム・タイトルを彼にもたらした。これでロジャー・フェデラー(スイス)の持つ男子最多記録の20タイトルまで、あと2つということになる。

 しかしここにナダル自身と、テニスを追い、テニスについて話す者たちにとっての最大の教訓があるかもしれない。ナダルが戻ってき続け、タイトルを増やし続けることはできないと考えるのをやめることだ。なぜなら彼は、彼が今いるところにとどまろうとするだけでなく、さらによくなっていくために必要なすべてをやるだろうから。

 ひとつ例をあげよう。ナダルは長いこと究極のベースライナー、後方からすべてのボールを返し、ネット越しにストロークを叩き返してくるタイプだと思われていた。しかしフィリップ・シャトリエ・コートでナダルは非の打ちどころのないボレーをし、ネットに出た27回のうち23ポイントを取ることにより、これまでそれほど評価されていなかった部門での実力を披露した。

 彼はストロークや戦術的要素を調整するためのトレーニングを、コンスタントに行っている。

「彼は上達しているし、そのテニスを進歩させている」とティームはいう。

「もし彼がそうしていなかったら、間違いなく彼はこの大会で毎年成功を収めてはいないだろう」

 ナダルは気落ちしていたかもしれないが、決して諦めることはなかった。

「彼はそれらの苦しい期間に、信じられないほど見上げた態度をとっていた。それが今日、彼をここに誘ったんだ」とナダルのコーチを務めるカルロス・モヤ(スペイン)は語った。

「ここ1ヵ月半の間に彼がやったことには脱帽する。事がすべてうまくいっているときに、いいプレーをするのは簡単だ。でも、あの数ヵ月に彼が潜り抜けたことは、彼がどのような競技者かということ、彼が精神面で天才であるということを示して見せている」

 ナダルの次の大会は、3週間後に始まるウインブルドンだ。彼は休むために時間を取ることが他のどんなことより重要だと考え、グラスコートの準備試合には出場を予定していない。

 不可避なことに、記者たちは今や近くまで迫ったフェデラーのグランドスラム大会優勝回数の記録を追う話を持ち出してきた。そして不可避なことに、ナダルはその話に取りあわなかった。それも、かなり魅力的なやり方で。

「そういうことについては考えないようにしている。僕がロジャーに追いつくかどうか、などということは。正直に言うが、僕はそういったことにあまり気持ちを割いていない」とナダルは答えた。

「隣の家の者が自分より大きな家を持っているとか、より大きなテレビ、より大きな庭を持っているとか言って、いちいち欲求不満を感じてはいられない。僕はそんなふうに人生を見てはいないんだ」

 その少しあと彼はこう続けた。

「もし、キャリアの終わりに、あといくつかのグランドスラム・タイトルを勝ち獲り、ロジャーに近づくことができたなら、それは信じられないほど素晴らしいことだ。もしそうでなくとも、僕にとっては変わらず信じられないようなキャリアだ。そうだろ?」

 ナダルは、フェデラーの記録については聞かれるまでまったく頭になかったと言った。それならば何について考えていたのだろうか?

「いま僕は33歳にして、よいテニスをプレーすることを楽しんでいる」とナダルはコメントした。

「そして、僕がどれくらい長くこれをやってのけ、続けていくことができるかを見てみようじゃないか」

(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

最終更新:6/12(水) 7:31
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