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映画『新聞記者』――国家の闇に立ち向かう女性記者    河村光庸

6/12(水) 13:13配信

創

望月記者の本にインスパイアされた

 東京新聞の望月衣塑子記者をモデルにした映画が作られているという情報は昨年から流れていたが、その映画が6月28日にいよいよ公開される。望月記者の著書と同じタイトルの『新聞記者』だ。ただしその著書は原案ではあるが、原作ではなく、映画の中身はだいぶ異なる。映画はこの間の安倍政権下に起きている出来事を盛り込んでおり、それに果敢に挑む女性新聞記者が主人公だが、あくまでもフィクションのサスペンスだ。
 ただ、主人公の記者が属するのは東都新聞と、東京新聞に似た名称だし、実際に東京新聞編集局が撮影に使われたらしい。物語の大事な要素である官僚の自殺も、加計学園疑惑の過程で実際に起きていたことだ。映画『新聞記者』は、安倍政権下で起きてきたことを素材にしながらもあくまでもエンターテイメントとして楽しめるものになっている。
 そのフィクションと現実を交錯させるために、映画の中に実際の望月記者や前川喜平さんが登場したりと、演出の工夫は随所にみられる。またフィクションとはいえ、映画のテーマが国家や政治権力の恐るべき本質を描き出し、結果的に安倍政権に批判的な作品になっているため、公開に対する逆風が吹き荒れないかと心配する声もある。
 政治的テーマのプロパガンダ映画でなくあくまでもエンターテイメントとして楽しめるものにする。しかし今の政治状況の中で、いろいろな風圧がかかる恐れはあるのでそれも意識しなければならない。そういう映画にかけた思いをプロデューサーの河村光庸さんに聞いた。(編集部)

 映画『新聞記者』は、東京新聞記者の望月衣塑子さんの著書『新聞記者』(角川新書)が原案になっています。本と映画の内容は違うけれど、望月さんの本にインスパイアされたということです。
 この2~3年の出来事をモデルにしながら、今の“安倍一強”と言われる異常な政治体制をテーマに描こうと思いました。ただ、多くの人に観てもらうためには、プロパガンダ映画でなく、それをエンタテイメントにしなければいけない。だから脚本作りには力を入れました。
 当初はリアルにするために政治家や官僚などを実名にすることも考えたのですが、そうすると事実を忠実に再現しなければならなくなる。だからそうではなくドラマにしたのです。
 ただ、リアルさを出す工夫はいろいろしています。例えば、望月さん、前川喜平さん、マーティン・ファクラーさんなどに3時間討論していただき、そのシーンを映画に挿入しています。この討論そのものの動画は、映画公開に先立って、5月にネットで公開しています。
 加計学園をめぐる騒動の中で、獣医学部と生物兵器の話が出ていましたが、それもこの映画のモチーフになっています。脚本を作る段階では、そういう話は荒唐無稽と思われるのではないかという声もありましたが、私はそう思っていません。学問の発展は戦争と隣り合わせだというのは歴史的事実だし、私自身、ありえない話ではないと考えています。今の時代の不条理を描くためには、そういう現実にありそうなことがリアルに反映されていることが必要だと思っています。
 主役の女性記者は韓国女優のシム・ウンギョンさんに演じていただきました。アメリカ育ちの韓国人という設定です。主役をシム・ウンギョンさんに演じていただいたのは、あのくらいの世代の日本人女優で、ああいう職業的女性のイメージがある方がなかなかいなかったためですが、彼女の抜群の演技力を見込んだということもあります。
 もう1人の主役、内閣情報調査室のエリートは松坂桃李さんに演じていただきました。記者と官僚という2人が、男女の恋愛感情といった要素を絡めなくてもサスペンスドラマとして成立するようなキャストを考えました。

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最終更新:6/12(水) 14:52

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