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映画『新聞記者』――国家の闇に立ち向かう女性記者    河村光庸

6/12(水) 13:13配信

創

今の政治状況で果たして公開できるのか

 この2~3年に実際に起きたことをもとにした映画ですから、今の政治状況の中で果たして公開できるのかという声もありました。あるいは公開したとしても、スタッフがテレビ局などの仕事から干されるのではないかとか、いろいろ心配する声はありました。実際、スタッフをお願いしようとして断られたケースもありました。
 今の官邸支配というのは、内閣人事局、内閣情報調査室、官邸機密費という3つを駆使して情報操作が行われる。しかも重要なのは、直接的な圧力でなく、同調圧力という形でそれが行われることですね。これが大きな特色です。
 そのためにマスコミを分断したり、テレビメディアに圧力をかけたり、といったことが行われているわけです。例えば今回の「令和」という新元号についても、あれはビューティフルハーモニーという意味だとかこじつけがなされているのですが、そういう官邸のやり方に批判的な報道はほとんどなされない。
 そんなふうにマスメディア全体が自粛してしまう雰囲気の中で、映画は比較的自由に作れる。そう思って作ったのがこの映画です。だから政権批判ではあるのですが、ただそれを政治的プロパガンダでなく、エンターテイメントにして多くの人に観てもらわないといけない。だからこの映画は、公開館数も150館と規模が大きくなっています。
 この何年か、アメリカ映画では、『スポットライト』『ペンタゴンペーパーズ』、あるいは『バイス』もそうかもしれませんが、政権を批判するような、メディアをテーマにした作品が幾つか製作されています。ただ日本で、しかも昔の話でなく、今起きている政治状況をテーマにした映画は、ほかになかったと思います。
 例えば森友・加計問題で、役人の自殺が起きていますが、それも重要な要素として映画に盛り込んであります。そういう現実にあったことを盛り込みながら、それをどうやってエンタテイメントにしていくかというところに苦労しました。
 脚本作りとキャスティングもそうですが、監督を誰にやってもらうかも大事なことで、上から目線でなく若者が見る目線で描かなくてはなりません。しかも鋭くテンポよい映像がほしいと思って、若手の藤井道人君にお願いしました。
 今の政権について描いているので、当初は、この映画は公開できるのだろうか、と心配する声もありました。私は2012年公開の『かぞくのくに』という映画でも北朝鮮の帰国事業をテーマにしたのですが、それも国家と家族の関係をリアルに描いて、ヤン・ヨンヒ監督と、もう二度と北朝鮮には行けないのではないかといった話をしました。
 幸いこの映画は『キネマ旬報』で邦画のベストワンに選ばれ、ヒットしました。ヒットさせなければプロパガンダ映画だとして歴史の闇に葬られてしまう。だから今回の映画もヒットさせなければいけないと思っています。

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最終更新:6/12(水) 14:52

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