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映画『長いお別れ』――「家族って良いよね」それを伝えたい    中野量太

6/12(水) 13:33配信

創

映画を撮る時に大切にしている2つのこと

『湯を沸かすほどの熱い愛』で日本アカデミー賞ほか多数の映画賞を受賞した中野量太の次なる監督作『長いお別れ』は、再び家族をテーマにした映画となった。原作は中島京子の同名小説。直木賞作品『小さいおうち』等で知られる中島の『長いお別れ』は、認知症を患い記憶や言葉を失っていく自身の父親と暮らした実体験をもとに、つらい日常だけでなく、生活の機微やユーモアを交えた温かいヒューマンドラマとして高い評価を受けた小説だが、これを中野監督はどのような映画にしたのだろうか。本人に話を聞いた。

中野 僕が映画を撮る時に大切にしていることが2つあって、1つは「今、撮らなきゃならない映画」かどうかということ。認知症というのは現代の社会において切っても切れないテーマだと思うので、これは今こそ描かなければいけないなと。もう1つは、厳しい現実の中で人間が懸命に生きる姿を描くこと、それは時に人間の滑稽さやおかしさを描くことでもあるんです。この原作に共感したのは、お父さんが認知症になってしまうという困難の中で、家族が一生懸命に生きる姿がとても愛おしくて滑稽で、それが僕の感覚に合っていたからです。

 前作の『湯を沸かすほどの熱い愛』では血の繋がりのない母と娘が、母の余命宣告を機に家族の絆を築いていく物語だったが、中野監督にとって家族とはどういう存在なのだろうか。

中野 僕は家族に決まりなんかないと思っているので、血が繋がっているかどうかは関係ないですね。家族とはこうあるべきだなんて言うつもりもないし、そもそもそんなものはないと思ってます。僕が家族について1つだけ言えるのは「家族って、なんか良いよね」ってこと。それだけは伝えたい。

 原作はフィクションだが、中島京子の父親をめぐる体験がベースに描かれている。映画化にあたって、中野自身の家族体験も影響しているのだろうか。

中野 おばあちゃんが認知症だったので、僕にもそういう経験はありました。僕は6歳の時に父が亡くなったので、ずっと母親に育てられたんですが、自分が不幸だと思ったことは一度もなかったですね。でも小さい頃から「家族ってなんだろう?」とはずっと考えていて、それが創作の原動力になっていると思います。一生答えは出ないと思いますが、やっぱり家族って面白いということを伝えたいし、いろいろな家族の姿を描きたいですね。

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最終更新:6/12(水) 15:01

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