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チェルノブイリの原発事故が「動物の楽園」を生み出した?

6/12(水) 19:12配信

WIRED.jp

19世紀まで、ウクライナとベラルーシの国境にあたるプリピャチ川流域には湿地と森林が広がっていた。そして歴史の常として、人類はそれを破壊した。森林は牧草地にするために焼き払われ、伐採された。伐採された木は材木や薪になった。ひと昔前には、ガラスやウォッカをつくる燃料として薪が大量に使われていたのだ。

チェルノブイリ原発事故、その「後始末」に送り込まれた元作業員たちの現在

ところが20世紀中ごろまでには、そうした産業の大半は消え去り、人間主体の再森林化活動によってこの地域は生まれ変わった。そして1986年4月26日、キエフの北方110kmを流れるプリピャチ川付近で、あの事故が起きた。チェルノブイリ原子力発電所が爆発炎上し、北半球中に放射線が降り注ぐことになったのである。

人が消えた地域で起きたこと

まさに天変地異のような出来事だった。

当時のソヴィエト連邦(ソ連)は最終的に、チェルノブイリ周辺約3,200平方kmから30万人もの人々を避難させることになった。この広大な地域は現在「チェルノブイリ立入禁止区域」と呼ばれており、旧原発はコンクリートの巨大な石棺に覆われている。

ところが現在、人が去ったのちに立入禁止区域で起きていることが、科学者たちの間で議論の的になっている。この数十年の同区域の研究では、植物や動物の生命は奪われ、残った生命も汚染されて病にむしばまれているだろうと考えられていた。

しかし最新の研究では、これとは逆のことが述べられている。植物が再び育ち、動物の生態系が事故以前よりも多様性を増しているというのだ。自然を取り戻すための取り組みが行われたわけではない。人間がいなくなっただけである。しかし結果として、人類が壊滅的な被害をもたらして去ったあとに世界がどうなるかを示す“生体実験場”になっているのである。

30億の人間がストロンチウム、ヨウ素、セシウム、プルトニウムといった放射性物質に晒されれば、『アベンジャーズ』のサノスが指を鳴らしたかのような大惨事になることは想像に難くない。実際、チェルノブイリ周辺で緊急対応にあたった救急隊員や作業員134人が深刻な放射能汚染を受けた。また、のちに復旧作業にあたった作業員も53万人が重度の汚染を受けている。被ばくした作業員たちの身体への影響についての研究は今も続いている。

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最終更新:6/12(水) 19:12
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