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骨太解説「日本の金融政策」がかくも無力なワケ

6/12(水) 5:40配信

東洋経済オンライン

現在、日本はじめ世界の先進諸国は一様に異常な経済状況に直面している。ゼロないしマイナスの金利、天文学的とも言うべき金融の量的緩和にもかかわらず、多くの経済はいまだ力強い回復を取り戻せていない。
なぜバブル崩壊後の経済が長期不況に苦しまなければならないのか。なぜ伝統的な金融政策はそうした不況に対して総じて無力なのか。なぜ財政赤字が拡大しているのに長期金利が低下するのか。
こうした疑問に答える書として、リチャード・クー氏の新刊『「追われる国」の経済学』が高い評価を受けている。経済学の重鎮である藪下史郎氏が、クー氏が展開している経済理論の本質について読み解く。

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■金融政策が無力な理由

『「追われる国」の経済学』(以下、本書)で展開される議論の基礎となるクー氏の日本経済の捉え方は、以下のようにまとめることができるだろう。

 資金の主たる借り手は民間企業であるが、高度成長期においては設備投資のための資金需要が旺盛であり、とくにアメリカなどの先進国の後を追う形で投資を拡大するため資金需要も増加した。そのときには物価・賃金も上昇してきた。この期間を黄金時代と呼んでいるが、日本は成熟経済であった。

 しかし、物価・賃金の上昇と新興国による追い上げによって、日本経済の国際競争力が低下し、市場が奪われることになる。その結果、企業にとって投資機会が減少することによって、企業による資金需要がなくなる。すなわち、日本が追われる国になってしまい、資金の借り手の多い成熟経済から借り手のいない状況に変わってしまった。

 さらに、クー氏が強調するのは、バブル崩壊による企業のバランスシートの悪化と企業行動の変化である。従来の経済学が前提とする企業は、利潤最大化に基づき投資と資金需要を決定したが、バランスシートが悪化した企業はそうでなく、債務の最小化、すなわちバランスシートの改善を目指して借金をできるだけ早く返済しようとする。

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最終更新:6/25(火) 12:36
東洋経済オンライン

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