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大学生1日あたりの生活費677円の残酷物語

6/13(木) 16:06配信

ニューズウィーク日本版

<仕送りが減って家賃が上がった今、東京の私大生の1日あたりの生活費は20年前の3分の1以下に>

東京私大教連の2018年の調査によると、私大新入生(下宿)の1日の生活費は677円、過去最低になったそうだ。資料は『私立大学新入生の家計負担調査』というもので、2018年5~7月に、首都圏の私大新入生の保護者に答えてもらったとある。

6月以降の仕送り平均額から平均家賃を引いて、それを30日で割って「1日の生活費」を算出している。2018年調査によると、仕送り額は8万3100円で家賃は6万2800円。前者から後者を引くと2万300円、これを30日で割って1日あたり677円となる。

資料には時系列データも載っているので、筆者が大学に入った1995年と比較すると<表1>のようになる。

<表1>

90年代半ばの頃は、平均仕送り額が12万円を超えていた。それでいて家賃は今より安く、1日あたりの生活費は2000円を超えていた。今では仕送りが減り家賃が上がっているので、677円という悲惨な数値になっている。

家庭の年収よりも仕送りの減少率が大きいのは、学費が上がっているのでそのしわ寄せを受けているからだろう。仕送りと家賃の差額を全部自由に使えるわけではない。光熱費等も差し引かれる。しかし収入も奨学金やバイト代が加味されるので、上記の677円という数値は、現実的にはもう少し高いのではないかと見られる。

<高等教育の「スリム化」も必要>

だがこれでは、学生も生活費稼ぎのバイトをせざるを得ない。手元に『日本大学学生生活実態調査』という資料がある。マンモス私大の日大学生のバイト実施率は、1994年では46.8%だったが、2018年では66.6%に上昇している。バイトの目的も様変わりしている。<表2>は、バイトの目的を2つまで選んでもらった結果だ。

<表2>

四半世紀の増分が大きい順に並べたが、生活費・食費稼ぎが19.7%から42.5%と倍以上に増え、旅行・交際・レジャー費目当ては52.7%から29.3%と大幅に減っている。<表2>を全体的に見て、切実な理由によるバイトが増えているのは明らかだ。

昨今の人手不足により、低賃金でバリバリ働いてくれる学生バイトは大歓迎される。学生の側もたくさん稼ぎたい。両者の意向がマッチして、学業に支障が出るまでのブラックバイトがはびこっている。学業とバイトの主従関係が逆転している学生もいる。

政府も重い腰を上げ、昨年度から給付型奨学金が導入され、来年度から高等教育無償化政策が実施される。対象は、住民税非課税の低所得世帯だ。一歩前進だが低所得層の救済という性格が強く、一般学生の生活が楽にはなりそうにない。

しかし大学進学率50%、高等教育進学率70%を超える日本において、全学生に支援の幅を広げるとなると膨大な財源を要する。入試難易度の低い私大の中には経営努力を怠り、教育機関として機能していない大学もある。学生を「金づる」としか見ていないところもある。こういう大学を公金で救済するべきではないと、一定の条件を満たさない大学は無償化の対象外となっている。

学生の生活支援の拡充も大事だが、高等教育の「スリム化」も必要だろう。大学進学が社会的に必須とされる必要もない。学生の生活困窮は、膨らみ過ぎた高等教育の構造上の問題でもある。

<資料:東京私大教連『私立大学新入生の家計負担調査』(2018年度)、
    日本大学『日本大学学生生活実態調査』(2018年度)>

舞田敏彦(教育社会学者)

最終更新:6/13(木) 19:08
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