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松本泰志が歩む、森崎和幸への道。偉大なるボランチへの一歩目

6/13(木) 19:06配信

footballista

「点をとりに行く時こそ、起点になりたいのに」

 ボールを蹴り上げては受け、蹴っては受ける。リフティングは、サッカーの基礎の基礎。ボールと友だちになるためには欠かせないトレーニングだと言える。

 2019年5月1日、令和初日。松本泰志はトレーニングが終わると、リフティングしながらクラブハウスへと戻っていった。今年初めて、紅白戦の1本目でサブに回ったトレーニングだった。

 ボールを置いた後、クーラーボックスの上に座り、じっとピッチを眺めていた。芝生はいつもと変わらずに碧く、ボールは白い。違うのは、松本にふりかかった現実だけ。そして彼は、現実を振り切って立ち上がり、誰とも会話をかわさずクラブハウスの中に消えた。

 「危機感はすごくある」

 その前日、20歳の若者は言葉を連ねていた。4月28日、平成最後の公式戦で途中交代。開幕戦に続き2度目となる交代は、自身にとっても衝撃的だった。開幕時の交代は、肉体的な事情であり、致し方ない。しかし今回は、戦術的な理由である。

 皆川佑介を投入し、得点をとりに行く。そのために前線の選手の交代ではなく、ボランチの松本を下げることを城福浩監督は決断した。柴崎晃誠を1列下げることの方が有効だ、と。いや、本当の理由は違うのかもしれないが、松本泰志は「点をとるために自分を下げた」と受け取った。

 「点をとりに行く時こそ、起点になりたいのに」

 攻撃的な選手と自負しているからこそ、その思いは強い。

 試合に出続けていても、レギュラーを奪った自覚はなかった。ケガで出遅れた青山敏弘や稲垣祥、そして柴崎晃誠も本来は中盤の底が本職。ボランチの実力者が目白押しの広島にあっては、試合に出ているからといってただちに「レギュラー」とは見なしにくい。だからこそ、彼は言っていた。

 「勝ち続ける。結果を残し続ければ、替えられることはない」

 たしかに、勝っている間は指揮官もメンバー変更に着手しなかった。しかし、FC東京との「首位決戦」に初敗北を喫し、名古屋にも敗れて連敗してしまうと、城福浩監督は続く横浜FM戦から松本泰志を先発からはずし、稲垣祥を起用した。今季の城福監督は「実績」も「可能性」も「年齢」も全て排除し、選手の「今」を査定し、相手のスタイルを見極めながら選択する。外れたのは松本だけではない。仙台戦では野津田岳人がベンチスタートとなり、鳥栖戦では渡大生やエミル・サロモンソンが。そして浦和戦では吉野恭平も先発できなかった。一方で、結果を出した森島司や荒木隼人が抜擢を受ける。「誰にでもチャンスはある」という指揮官の言葉は、一方で「誰でも絶対的なレギュラーというわけではない」という競争原理の徹底を意味しているわけだ。

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最終更新:6/13(木) 19:06
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