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「先生のタトゥー」はOKか?消すように命じるのはOKか?

6/14(金) 7:53配信

教員養成セミナー

【設例9】学生時代に入れたタトゥー、見られたらどうなる?

学生時代に入れたポイントタトゥーがあります。見せるつもりはありませんが、万一見られたら、どうなりますか?

1 タトゥーを入れるのは個人の自由。それが制約される理由は?
 タトゥーを入れる行為は、憲法第13 条の幸福追求権として保障されると考えられます(表現の自由と考える立場もあります)。しかし、教員のタトゥーが、子供の目に触れると、どうなるでしょうか。

 教員のタトゥーに対して、予想される問題として典型的なものは、教員のタトゥーを見た子供が保護者にそのことを伝え、それを問題視した保護者が学校に苦情を申し立てるといった事案です。苦情を受けた学校が教育委員会に相談し、教育委員会からタトゥーを消すようにとの職務命令が出たにもかかわらず、教員が従わずにいて、懲戒処分を受けるといった派生的な事案もあるでしょう。


2 自治体による入れ墨の有無の調整は適法
 類似の事案として、大阪市が職員に対して入れ墨の有無を調査した際、調査に従わなかった職員を懲戒処分にした事案があります。この事案では、第一審(大阪地方裁判所平成27 年2月16 日)は、個人情報保護条例違反を理由に入れ墨の有無の調査は違法と判断しましたが、控訴審(大阪高等裁判所平成27 年10 月15 日)は、本件調査を適法と判断しました。裁判所は、入れ墨のファッション性や社会の価値観の変化に言及しつつも、入れ墨には現在もなお反社会性を喚起させる要素があり、市民に不安感や威圧感を与える可能性は否定できないことから、入れ墨をしている職員を市民等に接する機会の少ない職務に異動させるために入れ墨の有無を調査することは適法であると考えています。

 このような裁判所の考え方に沿えば、設例の教員のタトゥーが子供の目に触れ、保護者から苦情があった場合には、学校は何らかの対応が必要になりそうです。もっとも、教員に採用される前に入れたタトゥーを職務命令として消すように命ずることは、教員に採用される以前の当人の経歴を理由に不当に差別的に扱うことにもなりかねません。保護者の苦情への対応としては、教員に対して過度の不利益が生じると考えられるので、より穏便な対応として、子供たちにタトゥーが見えないよう徹底するように命ずることが考えられます。


3 子供たちへの影響を第一に考える
 しかし、それでもなお残る問題としては、教員に採用される前に入れたタトゥーに関して、他者がどこまで干渉できるかということです。実は、前述の大阪市の事案では、裁判所はどのような入れ墨が不安感や威圧感を与えるかは客観的に明らかではないので、入れ墨の態様を問わず一律に調査することも適法であるかのような論法を採用していますが、この点は異論もあるところです。

 設例でいえば、保護者はともかく、子供が不安感や威圧感を抱くのであれば、教員はタトゥーが見えない服装を徹底すべきでしょう。なぜなら、子供の学習権に影響が及んでしまうからです。しかし、子供が何ら不安感や威圧感を抱かないような、ファッション性の高い小さなタトゥーの場合、教員にタトゥーが見えない服装の徹底を命ずるのは、得られる利益と失われる利益を比較して教員に過度の不利益を与えるようにも思われます。一方で、教員のタトゥーを見た子供が真似をしようとして、身体を傷付けるようなことが起こりかねないなど、教員の影響力の程度を鑑みれば、子供の安全に配慮する必要もあります(ただし、子供がタトゥーを入れる行為自体は保護者の管理下のことであり、教員に法的責任を負わせることは難しいでしょう)。

 したがって、タトゥーのある教員に対して何らかの職務命令を発する場合には、子供たちの反応や影響を第一に考えた対応とすべきでしょう。

※このコーナーに出てくる人物名や団体名,設定は架空のものです。

著・監修 神内 聡
弁護士・高校教員。教育法を専門とする弁護士活動と東京都の私立学校で高校教師を兼業する「スクールロイヤー」活動を行っている。担当科目は社会科。著作に『学校内弁護士 学校現場のための教育紛争対策ガイドブック』(日本加除出版)など。

『月刊教員養成セミナー 2019年7月号』 
「スクールロイヤー神内聡の教師のための法律相談」より

最終更新:7/11(木) 19:03
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