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映画「誰がために憲法はある」井上淳一 監督に聞く

6/14(金) 19:33配信

創

その仕事に正義はあるか

 憲法と原爆を真正面からテーマにした映画『誰がために憲法はある』が異例のロングランを続けている。日本国憲法を擬人化した一人語り「憲法くん」を名優・渡辺美佐子が演じる一人芝居と、その渡辺が仲間のベテラン女優たちと長年に渡って続けている原爆朗読劇を2本の柱にしたこのユニークなドキュメンタリーを手がけたのは、昨年『止められるか、俺たちを』の脚本を手がけた井上淳一監督。「映画を武器に世界と闘う」は故・若松孝二の言葉だが、若松監督の弟子にあたる井上は、いまの日本の社会状況に対して「映画は何もしなくていいのか?」と止むに止まれぬ思いでこの映画を作ったと言う。井上監督にその思いを聞いてみた。                  加藤梅造(LOFT)


──「憲法くん」はもともと芸人の松元ヒロさんが20年以上演じている一人語りですが、これを戦前生まれの名女優・渡辺美佐子さんが演じたのは、どういう経緯からですか?

井上 僕は、美佐子さんが出演していた「燐光群」の演劇、沖縄の問題を取り上げた『サイパンの約束』やハンセン病を取り上げた『お召し列車』を見ていたので、彼女ならこういう社会的なテーマの映画にもためらわずに出てくれるんじゃないかと思いました。それで美佐子さんに依頼の手紙と「憲法くん」の絵本を送ったところ、快く引き受けていただけたんです。とはいえ、憲法前文を含む「憲法くん」の膨大な台詞を憶えるのは大変なことなので、当初は普通に朗読でと言われたのですが、「この映画は美佐子さんが憲法くんになって演じることが重要なんです」と説得しました。「私が憲法くんなら憶えないとね。大変だけど、いいわよ」と言ってくれて、その時には涙が出ました。

──美佐子さんによる「憲法くん」の一人語りはすごい迫力でしたが、ベテラン女優たちが33年間続けているという原爆朗読劇も非常にずっしりと響きました。彼女たちがなぜ手弁当でやっているのかを語るシーンもよかったです。

井上 日色ともゑさんが先輩の宇野重吉さんから「その仕事に正義はあるか」と言われたエピソードや、大橋芳江さんが父親から、「戦争で死ぬなら反対して死ね」と言われたことなど、なぜ女優たちがあの朗読劇をやり続けているのかの思いが伝わってきますよね。僕たちは子供の頃に彼女たちが出ているドラマを見て育ったわけですが、当時の演劇人の中にはそういった意識が強くあったんだなと。

──大原ますみさんが「こういうことをやってると左翼だって言われてしまう日本の雰囲気が不思議ですね」と言ってますが、今の社会の風潮を見事に言い当ててました。

井上 大原さんは宝塚歌劇団の大スターとして活躍した方ですが、そういう人がああいった発言をするのは非常に意味のあることだと思います。

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最終更新:6/14(金) 19:33

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