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都心、駅近の好立地…築古物件に残る賃借人を退去させるには?

6/14(金) 12:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

不動産には、宅地宅建取引業法、建築基準法、民法、借地借家法、各条例の他、さまざまな法規制が敷かれています。これらの勘どころを押さえ、不動産投資に有利に活用していけば、大きな利益を上げることが可能です。本連載は、弁護士法人Martial Arts代表、弁護士・堀鉄平氏の著書、『弁護士が実践する 不動産投資の法的知識・戦略とリスクマネジメント』(日本法令)から一部を抜粋し、ワケあり物件(凹みがある状態)を法的知識を駆使して安価で手に入れ売却する「オポチュニティ型」と呼ばれる投資手法を紹介していきます。

物件の建替えができれば凹みは解消されるが…

(1)凹みの理由

都心駅近の好立地にもかかわらず、いまだに木造2階建ての古アパートや、RC造であっても容積率を十分に消化していない(本来であればより大きな建物が建築できる)古ビルが散見されます。このような築古物件には以下の凹みがあります。

凹み(1)築年数が古いため、耐震性に問題があり、今後発生が予想される南海トラフ型大地震や首都直下型地震に建物自体が耐えられるのか疑問

凹み(2)築年数が古いため、多額の修繕費が発生していく

凹み(3)築年数が古く、間取りや設備の点でも築浅物件に劣るため、賃料は下落傾向にある。それに伴い、空室率も増加していく

凹み(4)売却する場合、買主にファイナンスが付きにくいため(建物の法定耐用年数が超過している場合、融資困難)、買主が限定される

凹み(5)建替えができれば、賃料増加が見込まれるが、賃借人が残存している場合には立退きは容易ではない

(2)必要な法的知識

以上の凹みですが、問題の所在は築年数が古いことにありますので、建替えができれば凹みは解消されます。そして、賃借人が残存している場合でも、契約期間満了を待って賃貸借契約を終了できれば、その後に建替えをすることができますので、何の問題もないことになります。

ところが、借地借家法28条は、賃借人を保護する趣旨で、建物賃貸借契約の期間が満了しても、賃貸人は「正当事由」がなければ契約の更新を拒絶できず、賃借人に退去してもらうことができないとしました。

そして、この正当事由の有無の判断においては、(1)自己使用の必要性、(2)賃借人が建物を使用する必要性、(3)建物の賃貸借に関する従前の経過、(4)建物の利用状況、(5)建物の現況、(6)財産上の給付等が考慮されます。

<借地借家法>

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第28条 建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

それでは、どのような場合に正当事由が認められるのでしょうか。

基本的には(1)~(6)の要素を総合考慮することになりますが、(1)自己使用の必要性と(2)賃借人が建物を使用する必要性(必要とする事情)が、正当事由を判断するうえで基本的な要素と考えられています。この基本的な要素を比較衡量して、どちらがより重要視されるべきかが議論の焦点です。例えれば、天秤ばかりの左右の受け皿に、分銅(重り)のように賃貸人側の必要とする事情と賃借人側の必要とする事情をそれぞれ乗せて、どちらに傾くかということです。賃貸人側に傾けば、「正当事由」があるということになります。

その他の付随的要素として、(3)賃貸借の従前の経過は、敷金、礼金や更新料の授受があったか否か、家賃の改定状況、賃借人に賃料不払い等の事情があったか否か、契約期間の長短等が考慮要素となります。(4)建物の利用状況は、賃借人が契約に定められた目的に従って建物を使用しているか、賃借人がどのくらいの頻度で建物を利用しているか、共同住宅の場合、退去済の賃借人がどの程度いるのか等の事情が考慮されます。

(5)建物の現況は、建物がどの程度老朽化しているか、補修をするために、費用がどれくらいかかるのかという点が考慮要素となります。賃借人の提供する(6)財産上の給付については、要するに立退料が問題になります。

ここで注意しておくべきことは、立退料さえ支払えば正当事由が満たされるというわけではない点です。ここはよく勘違いされるのですが、(6)財産上の給付はあくまでも正当事由の補完的な要素と考えられており、(1)~(5)の事情によって正当事由がある程度認められる場合に、立退料を支払うことで正当事由が完全に認められます。つまり、(1)~(5)では正当事由が認められないという場合には、立退料をいくら支払っても、理論的には正当事由は認められないということになります。

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最終更新:6/14(金) 12:00
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