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国際金融都市・香港を脅かす「逃亡犯条例」案とその影響

6/14(金) 19:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

香港では「逃亡犯条例」の改正案に反対する大規模な抗議デモが起こり、12日、デモ隊と警察が衝突。ゴム弾や催涙弾なども使用され、負傷者や逮捕者が出ている。現地より、Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence BankのCIO長谷川建一氏が、その背景と現在の様子、今後の経済への影響を解説する。

身柄を拘束されれば、中国本土に引き渡される可能性?

6月9日、香港では、香港政府が立法府に提案した「逃亡犯条例」の改正案に反対する大規模な抗議デモが起こった。主催者の発表は103万人、政府の発表では24万人と大きく食い違っているが、大きな参加人数の違いは、抗議デモの受け止め方の違いを反映している。

デモの参加者が2カ月以上もの間、香港中心部の幹線道路を封鎖した2014年の「雨傘運動」も記憶に新しいが、今回の抗議デモは、2003年に立法会に提案され最終的には撤回された「国家安全条例」案に反対しての抗議デモ以来、最大の規模だったと推定される。

今回の抗議デモは、12日も香港島側にある香港立法会(議会にあたる立法機関)がある金鐘(アドミラルティ)付近で大規模に行われ、立法会は休会を余儀なくされた。この条例案は、犯罪容疑者を香港から中国本土へ引き渡すことを可能にするもので、多くの香港人はもちろん、多くの企業や外国政府からも、懸念や疑問が表明されている。

念のために香港の13日の状況を述べると、立法会周辺の金鐘(アドミラルティ)地区では、警戒態勢が引かれ、商店や金融機関の営業を停止しているところも出ているものの、金鐘地区周辺以外では、通常の営業・生活が継続している。銀行も通常営業しており、証券市場も通常通り取引が行われている。交通機関の運行状況も平常どおりである。

話を本題に戻そう。犯罪者の他国への引渡しについては、香港は、米国など20カ国と犯罪者を引渡す協定を締結している。しかし、中国本土やマカオ、台湾との間には、同協定を締結していない。ちなみに、中国は、55カ国との間で犯罪者引渡し条約を結んでいる。

その香港で、昨年、こんなことが起こった。香港人の男性が、台湾で恋人を殺害し、逮捕される前に台湾を抜け出し香港に戻ってしまったのである。香港政府は、台湾との犯罪者引渡しに関する協定がないことから、この男を台湾に身柄を移送し引き渡すことができなかった。林鄭月娥(キャリー・ラム)香港行政長官は、こうした「法の抜け穴をふさぐため」に必要な措置として、今回の「逃亡犯条例」案を提案したと説明している。

しかし、この「逃亡犯条例」案は、犯罪容疑者を香港から中国本土に引渡すことを可能にするという一面も持つ。香港に住み働く人ももちろんだが、旅行者や出張者、トランジットのため空港に降り立っただけの人も含め、香港で身柄を拘束されれば、「犯罪容疑」を理由に、中国本土に引き渡される可能性を否定できない。

「雨傘運動」の時の、抗議行動は、「普通選挙」の実施を求めるという香港人の政治的権利を訴えたものだったが、今回の条例改正案への反対運動は、香港に住む者だけの問題を超えて、香港で仕事をする者、活動する者すべてに関わり、しかも人権そのものに関わる問題である。

普通選挙権や独立などの問題では抗議デモに参加することに消極的だった中間所得層でも、今回はデモに参加しているのは、それだけ影響が大きいということなのだろう。加えて、中国本土の司法制度は、行政や政治から独立しておらず、司法プロセスそのものにも信頼感が低いことも懸念を大きくする。

「逃亡犯条例」案を提案した段階では、林鄭行政長官は、これほどの世論の反発があることを読めていなかったのではないだろうか。9日の大規模デモが大きな衝突なく終わった時にも、同長官は条例案の可決を急がせようとした。立法会の親中国勢力の中にすら、疑問の声が上がる中で、なぜ、これほど前のめりにこの法案を成立させようとするのか、理解に苦しむ。それが、12日にも抗議デモが発生し、衝突につながってしまった部分もあるのではないだろうか。

また、行政長官の支持を表明している中国政府ではあるが、外国メディアの報道に過剰で偏った報道だとの、反駁はするものの、採決を強行しろというほど、この条例案に執心しているようには見えない。「第二の天安門」というフレーズは中国政府の嫌がるところでもあり、非武装の抗議デモを力でねじ伏せることと引き換えにはしないだろう。しかも、苦心してつくりあげてきた「一国二制度」と共産主義経済と自由主義経済の間で微妙なバランスを取りながら成功を収めてきた香港の発展を阻害することの打撃は大きいことは、中国も良く理解している。今回の対応を誤れば、2003年のように、現職行政長官の首と引き換えに、幕引きを図るというシナリオが浮上するかもしれない。

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最終更新:6/17(月) 15:42
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