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地球の裏側にあるボールもつかめる!? 「テレロボティクス」の驚くべき世界

6/15(土) 12:12配信

WIRED.jp

ロボット工学がもたらす恩恵

触れるという感覚を再現するには、より繊細さが求められるものだ。人は物体の質感を知るためにその表面を指でなぞったり、ものの柔らかさを判断するためにそれを強く握ったりする。

「人間はものを動かしたり何かの作業を器用にこなしたりするとき、物体から皮膚に伝わる圧力や力といったささいな手がかりをいくつも無意識に活用しています」と、HaptXの創業者で最高経営責任者(CEO)のジェイク・ルービンは話す。

まだ初期段階の技術ではあるものの、最先端のロボット工学はある素晴らしい未来を約束している。人間を危険な状況から遠ざけるというものだ。

Shadow Handは、人の手という奇跡を完全に再現できたわけではない。しかし、非常に印象的な技術だ。ここからロボットハンドは、さらに巧みな操作スキルを発展させていくことだろう。そしていつの日か、とても器用なロボットを厳しい環境に送り込むことができるかもしれない。

そこではロボットの判断に任せるのではなく、わたしたちに代わりに動く分身として、ロボットを遠隔操作できるのだ。SynTouchの共同創業者で最高技術責任者(CTO)のジェレミー・フィッシェルは、次のように語る。

「ものに触れる感覚をもたないロボットは、周辺にあるすべてのものの性質や位置がわかっている環境でしか作業できません。あるいは、とてもゆっくり動くように設計して、生じた問題が深刻化する前にそれを感知するしかないでしょう。しかし触覚が備わっていれば、こうした問題は解決されます」

ハプティクスが生む「不気味の谷」

奇妙な問いかけに聞こえるかもしれないが、ロボットとは「痛み」を人間に知らせる存在であるべきだろうか。

わたしたちは痛みを感じるからこそ、生身の体でばかげた真似をせずにいられる。もし非常に高価なロボットを操作していて、何かを傷つけるぐらいの力を加えているとしたら、その状況をロボットから教えてほしいと思うだろう。

この問題については、スマートな義肢や義手などの分野で研究が進められている。最初の課題は、こうした補助用具にどのような方法で痛みを経験させるかだ。補助用具は生き物ではないため感情をもたない。では、体の一部を失った人に対して、どうすれば痛みを伝えることができるのだろうか。

もっと不思議な話をすれば、ロボットを通じて触れた場合においても、「不気味の谷」に落ちる日が来るかもしれない。再現された感覚はとてもリアルでありながら、あともう一歩リアルさに欠けるという状況で、おそらく強い違和感を覚えることになるだろう。

「特に人と人、人とほかの生物とが触れ合うとき、不気味の谷が起きるでしょう」と、南カリフォルニア大学でハプティクスを研究するロボット工学者のヘザー・カルバートソンは推測する。カルバートソンは今回のプロジェクトには参加していない。「生きていると十分には感じられない何かに触れるとき、リアルでも機械的でもどちらでもないという感覚に陥るのです」

ロボットを通じて物体を感じる。そんな不思議な感覚から始まった旅は、さらに不思議な方向へと進んでいる。わたしたちは、世界をもう一度探検する赤ん坊さながらの状況にいるのだ。

MATT SIMON

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最終更新:6/15(土) 12:12
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