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争い回避へ変わる相続 7月から、介護「嫁」も請求権

6/16(日) 7:47配信

NIKKEI STYLE

民法の相続に関する規定(相続法)が7月から大きく変わる。故人の預金を遺族が必要に応じて換金できる仕組みがスタート。介護の貢献に応じて財産を受け取れる権利を新たに義理の娘らにも認める。相続で起きがちな手続き面の混乱や親類間の争いを避けるのに一定の効果が期待されるが注意点もある。
2018年7月に改正された相続法は手続きの簡略化、争いの回避を狙いに様々な規定を盛り込んでいる。それぞれ施行日が決まっており、今年7月1日は重要な変更が多く控える。

■入院代や葬儀代に

その1つが遺産となった預貯金に関する規定だ。相続法によると遺言書を残さずに亡くなった場合、故人の財産は遺族(相続人)による共有の扱いとなる。分けるためには全員で話し合って方法を決める「遺産分割協議」が必要になる。
しかしその協議は、相続人が離れて暮らしていたりして時間がかかるのが通常だ。その間、生前の入院代や葬儀代などの支払いを迫られて故人の預金に頼ろうとしても銀行が容易に換金に応じないことがある。
そこで始まるのが仮払い制度だ。分割協議の最中であっても、他の相続人の了解なしで一定額まで口座から引き出せるようになる。その額は相続人1人当たり「預金額の3分の1×法定相続割合」だ(図A)。

例えば預金額が600万円で相続人が配偶者と1人の子なら法定相続割合はそれぞれ2分の1で引き出し可能額は100万円だ。1つの金融機関で引き出せる金額には150万円という上限があるが、申し出て戸籍謄本などを提出すれば金融機関は応じてくれる。

遺産分けを巡って遺族同士がもめて分割協議の場が家庭裁判所での調停に移ることもある。その場合、家裁が必要だと認める金額は引き出し可能だ。
預金は引き出した後もあくまで相続人共有の財産であることは認識しておきたい。例えば分割協議の結果、ある遺族の取り分がゼロと決まれば「その人がすでに引き出した分は他の相続人に渡す必要がある」(元広島家庭裁判所長で弁護士の北野俊光氏)。
7月からの改正でもう一つ大きいのが「遺留分」についての規定だ。
相続で遺言が残されていた場合、その内容のとおりに遺産を分けるのが相続法の基本だ。ただし配偶者や子など法定相続人にあたる人に対しては遺産をもらえる最低限の割合を保障している。遺留分という。
ところが遺言を開封してみたら偏った遺産配分が書かれていたという例は珍しくない。遺留分より少ない分け前しかない人は権利を侵害されたことになる。
図Bは総額8000万円を3人の法定相続人で分けるケース。問題となるのは次男の分け前だ。この例で遺留分は財産全体の8分の1、1000万円だが、遺言には預金500万円と書かれていた。

従来の制度だと、次男が不足分の受け取りを兄らに請求すると財産が相続人による共有状態となった。預金ばかりか自宅の不動産まで共有となりすぐには分けられなくなる。
共有状態になった財産は改めて分けるのに「共有物分割訴訟」という裁判さえ必要になりかねない。こうして遺留分を巡る争いは解決に数年かかることが珍しくなく、「制度にも問題があった」(大和総研研究員の小林章子弁護士)。

改正法の施行後は遺留分に満たない分は現金で請求することとなる。遺留分侵害額請求権という。図の例では「現金で500万円を払え」と兄らに請求できる。共有状態にはならないため前述のような共有物分割訴訟は不要となる。
裁判所は今も調停などの場で遺留分の現金返還を提案することはあるが、改正法で権利が明確となり、解決までの時間が短縮するとみられる。遺産が不動産しかなくて現金をすぐに用意できない場合を想定し、裁判所の判断で支払期限を延ばせる仕組みもできる。

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最終更新:6/16(日) 12:15
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