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<目撃>食虫植物が両生類を「釜ゆで」に!? 普段から食べていた、研究

6/16(日) 8:20配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

餌の少ない湿地で栄養豊富なサラマンダーを常食、カナダ

 食虫植物は想像以上に食いしん坊なのかもしれない。両生類のサラマンダーを普段から食べているという研究結果を、カナダのチームが6月5日付けの学術誌「Ecology」に発表した。

【動画】食虫植物が両生類のサラマンダーを「釜ゆで」に!?

 鳥取県倉吉市にある鳥取短期大学の生態学者、田川一希氏は、食虫植物の中でカエルやネズミなどの脊椎動物が見つかったことはこれまでにもあるが、「偶然捕らえられ、餌食になったと考えられていました」と話す。

 そのため、田川氏は今回の発見にとても驚いている。なお、田川氏は今回の研究には関与していない。

 カナダ、トロント大学の生態学者で、今回の研究を率いたパトリック・モルドワン氏は2018年8月、アルゴンキン州立公園の湿地を歩いているとき、奇妙な光景を目撃した。

「ひざまずいて中をのぞいた最初の植物がサラマンダーを捕らえていました。サラマンダーはまだ生きていて、泳いでいました」

 興味をそそられたモルドワン氏と研究チームのメンバーは、袋状の葉に水をため、その中に虫をおびき寄せて捕まえるムラサキヘイシソウ(Sarracenia purpurea)を1カ月半ほどのぞき続けた。その結果、調査の対象となったムラサキヘイシソウのおよそ20%に、イモリの仲間であるスポテッドサラマンダー(Ambystoma maculatum)の幼体が入っていた。複数の個体が捕らわれているケースも多く、合わせて35匹が確認された。

 獲物の少ない強酸性の湿地で生きられるよう進化を遂げた食虫植物にとって、両生類は栄養面で大きな後押しになると、モルドワン氏らは考えている。ただ、この関係はサラマンダーの個体数に影響を及ぼす可能性もある。オンタリオ州の湿地ではすでに、スポテッドサラマンダーの生息密度が低下している。

サラマンダーが死ぬまでに3~19日

 食虫植物は通常、花粉を媒介する昆虫などの獲物を蜜でおびき寄せる。植物内の小さな水たまりに落ちた獲物は、時間をかけて消化される。

 サラマンダーは何かから逃げている途中で水たまりに落ちたのかもしれないし、食虫植物がおびき寄せた昆虫に引き寄せられた可能性もある。「その結果、足を滑らせ、自らも餌食になってしまったのでしょう」

 いずれにせよ、これまで気付かなかったのは不思議だと、モルドワン氏は話す。ムラサキヘイシソウもスポテッドサラマンダーもよく見かける種だからだ。

 気付かなかったのは、以前のムラサキヘイシソウの研究が、春や夏に行われていたせいかもしれない。スポテッドサラマンダーがムラサキヘイシソウの餌食になるのは、晩夏から初秋の頃と思われる。ちょうど水生から陸生に変態する時期だ。

 ムラサキヘイシソウの側に季節的な要因がある可能性もある。一帯では早ければ9月に寒くなる。昆虫が少ない期間、この大きな獲物はとんでもない恩恵だ。

「これらの植物が捕まえるどの無脊椎動物より、サラマンダーは窒素、リンなどの栄養が比較にならないほど豊富です」

 ただし、サラマンダーを捕まえることにはリスクもある。獲物が大きいと、消化を終える前に腐敗し、そのせいで植物の命が奪われる恐れがあるのだ。

 田川氏が関心を持っているのは、食虫植物がサラマンダーを捕まえた後、どれくらい効率的に消化できるかだ。モルドワン氏らの論文によれば、サラマンダーが捕らわれてから死ぬまでに3~19日かかっている。植物内の小さな水たまりが太陽によって熱せられ、文字通り、釜ゆでにされているのかもしれないと、モンドワン氏は推測している。

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