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地震防災の専門家が「もう超高層ビルは作るな」と主張する理由

6/16(日) 11:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

※本連載は、建築耐震工学、地震工学、地域防災を専門とする名古屋大学教授・福和伸夫氏の著書『必ずくる震災で日本を終わらせないために。』(時事通信出版局)から一部を抜粋し、大震災の危険性はどれほど高まっているのか、さらに対策はどれほど進んでいるのかを紹介しながら、防災・減災に向けた早急な対応の必要性を説いていきます。今回は、高層ビルの設計について見ていきます。

「長周期地震動の共振」で建物が大きく揺れる

■トラウマになった揺れ

私は、超高層ビルをつくるのは、もうやめた方がよいと考えています。そんなに高い建物をたくさんつくる必要があるでしょうか? それが絶対に安全なものならこんなことは言いません。でも、日本の超高層ビルがコストカットを重視してきたことは否めません。初期のビルは長周期地震動のことはあまり考えていませんでした。大手町や丸の内で、初期の超高層が建て直されていますが、機能が古くなったからだけでしょうか。長周期地震動の対策も含まれているような気がします。

*かつては、高層ビルは長周期地震動を前提に設計されていませんでした。高層ビルは20年に1回ぐらいリニューアル工事がありますが、そのときリニューアルするか、それでコストをかけるより建て替えた方がいいかという判断をします。耐震性の不安や設備の老朽化によって建て替えが進んでいます。

私は1983年の日本海中部地震のとき、日比谷公園の近くにある28階建てのビルの27階に勤めていました。ビルがゆっくり揺れ始め、ブラインドがブラブラっと大きく揺れました。テレビを見ると震源は秋田沖だと言います。「超高層ビルってこんなに揺れるんだ」と思ったのが出発点でした。

次にびっくりしたのは2000年の鳥取県西部地震です。そのときは名古屋・栄の8階建てビルの一番上の階で、建築の構造設計者向けの講習会をやっていました。やはりグラグラっと揺れて、メチャクチャ大きい地震が起きたと思ってテレビを見に行くと、鳥取の地震。高層ビルやラーメン構造の建物は揺れるんだと、すっかりトラウマになり、そこから超高層問題に取り組み始めました。

阪神・淡路大震災の論文を読んでいると、小さな図の中に、大阪のとあるビルが、メチャクチャに揺れている波形を見つけました。「なんでこんなに揺れたんだ」と自分の目を疑いました。神戸では周期1秒の揺れがいっぱい放出されて、1秒で揺れやすい10階建てくらいの三宮の建物が中間階からグシャッとつぶれました。震源から離れた大阪の高層ビルが、4秒くらいの周期で、共振でものすごく揺れていました。でも、そのことはあまり表に出なかった。クライアントにとっても設計者にとっても、具合が悪かったからでしょうか。

*大阪の高層ビルが長周期地震動ですごく揺れたことが表に出なかったのは、業界は基本的に建築主に迷惑がかかることは言わないものだからです。こうした経験を今後の建築に生かせばいいのですが、建築は大量生産の工業製品でなく一品生産だから、経験が次に生きにくいところはあります。

これまでの構造設計では、外力は誰かが決めてくれることになっていました。でも、実際の外力は建物の揺れ。それがどう生み出されるかは、地盤の揺れと建物の揺れの相対関係で決まります。長周期地震動を受けて共振すると、こんなに揺れる。それから、私は「長周期! 長周期!」と言い続け、そのころ付き合いのあった報道関係者と一緒に、長周期地震動を検証する番組や記事を名古屋でいっぱいつくりました。そのために、いろいろな揺れを再現する実験道具「ぶるる」もつくりました。

兵庫県にある実物大の振動実験施設「E-ディフェンス」でも実験をしました。超高層ビルの一部を模した構造を激しく揺さぶりましたが、一見無傷。でもよく見ると、柱と梁の間がバシバシに切れていました。一度切れていたのが、元に戻ったから、最初は気付かなかったのです。少しくらい切れたところがあっても、全体の形は変わらないので、気が付きませんでした。

*「E‐ディフェンス」は国立研究開発法人防災科学技術研究所がつくった世界最大級の実験施設「実大三次元震動破壊実験施設」。15メートル× 20メートルの震動台の上に最大1200トンの構造物試験体を載せ、阪神・淡路大震災を上回る地震動をおこし、どう壊れるかを研究します。

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最終更新:6/16(日) 11:00
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