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少子化問題で「小さな奇跡」と評されたドイツ、裏に外国人出生率の急上昇

6/17(月) 10:25配信

日経BizGate

新生児の母の4人に1人が外国人

 2016年に生まれた新生児のうち18万4660人、全体の23%の母が外国人だった。2011年以降に生まれた子どもの内訳をみると、この比率は17%程度で推移していたが、2015年に20%を超え、2016年はさらに大きく伸びた。ドイツでも母親の年齢の中心は30代であるが、その30代の人数を移民が約10%押し上げているというデータもある。州や自治体によってバラツキがあることを考えると、小さい赤ちゃんとお母さんは外国人ばかりにみえる地域もあるだろう。ここで確認しておきたいのは、母親がドイツ人という子も増えていることだ。これは全体の人口の増減とは異なる傾向である。

 ドイツ連邦統計局では、子どもの国籍別人数も発表している。外国人の子ども全体でみると、主には欧州諸国だが、最近シェアや伸びの大きい10カ国分の内訳によると2016年までの6年間、一貫して単独で最も多いのはトルコである。2015年までは、次に多いグループはポーランド、ルーマニア、コソボといった東欧諸国だったが、2016年に急上昇したのがシリアである。東欧諸国の絶対数も伸びてはいるものの、こうした目立った状況も、ドイツの難民受け入れに対する人々の考え方に影響を及ぼしていないとはいえないだろう。

東西ドイツで今も異なる働き方と子育ての基準

 こうしてみてくると、ドイツの人口に関する話題はとにかく外国人次第という印象を受けなくもないが、ここ数年は好調な経済と失業率の低下傾向も見逃せない。また、戦後の歴史を振り返ると、1949年に東西ドイツに分かれ、そして1990年に統合したことの影響も大きい。フランスが19世紀にドイツとの普仏戦争に負けて出生率の低さを問題視したことは第2章で述べたが、ドイツの場合、第二次世界大戦時ナチス政権下での人種主義的・強制的な人口政策への嫌悪と反省から、出産を奨励するような政策はタブーだったとされる。

 戦後の歩みについては、西ドイツと東ドイツで大きく異なった。社会主義政権のもとにあった東ドイツでは、女性も生産のために労働者としてフルタイムで働くのは普通であり、かつ、労働人口をキープするために、仕事と子育ての両立も当たり前のこととされていた。そのため、保育所の整備も進んでいた。

 他方、西ドイツでは、先に触れたファシズムへの嫌悪と反省から国は家族といった私的な領域には介入せず、「社会的公正のための経済上の不平等を是正するにすぎないとする助成原則」を基本とした。つまり、子どものいる家庭の子育てにかかる経済的な負担を軽減するという発想にとどまっていた。

 社会福祉国家としての制度は充実させ、1953年には家庭省を設置して児童手当などを手厚くしていた。母親は主に家庭で子育てをするという考え方が根強かったのは、例えばドイツでは小学校の給食がなく昼食は家で食べるといったことや、ドイツ人主婦の家事ノウハウが日本でもよく紹介されてきたことからも想像できよう。

 1990年の東西ドイツの統合後、基本的には旧西ドイツの政策や制度が引き継がれた。1990年代の主な政策としては、育児手当や児童扶養控除の引き上げ、育児休業期間や育児手当の支給期間の延長がなされた。育休の期間でいえば、1992年に1.5年から3年に延長されており、ここはフランスと変わらない。しかし、これらは家庭での子育てを奨励する施策であり、母親の長期離職につながり、仕事と子育ての両立にはならなかった。他方、旧東ドイツでも、社会の急激な変化による混乱や高い失業率により、出生率が急減した(1990年の1.52から1994年の0.77まで)。

 仕事と子育ての両立支援については、2000年代から考え方を大きく変えてくるのだが、働き方に対する東西の感覚の違いは統合後の現在も根強く残っている。2012年時点でフルタイムで働く母親の割合は、旧東ドイツ地域で55.7%、旧西ドイツ地域で25.2%と、倍も違う。

 また、もう1点よく指摘されるのが、婚外子の割合である。2015年時点において、婚外子の割合は旧西ドイツ地域で29.5%、旧東ドイツ地域で60.7%、ドイツ全体で35.0%だった。フランスは59.1%、ノルウェーは55 ・9%だったのと比較しても、旧東ドイツ地域が高くなっており、欧州のなかではアイスランドの69.6%に次ぐ高さだった。

 これは、東ドイツでは出産奨励を意図して、1950年から婚外子の処遇に差をつけない制度ができていたのに対し、西ドイツにはなく、統合後の1997年にやっと婚外子の処遇に関する法改正がなされたためだと考えられる。

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最終更新:6/17(月) 10:36
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