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日本の新元号「令和」に関する考察

6/17(月) 16:38配信

nippon.com

ライアン・シャルジアン・モリソン

令和の意味を考える

「令和」の幕開けから早くも1カ月が過ぎた。新元号の典拠は日本最古の歌集である『万葉集』(759年)とされている。『万葉集』の該当箇所は、梅の歌32首の漢文で書かれた序文中の一節だが、令と和の2文字は続けて出てくるわけではなく、間に4つの文字が挟まれている。以下が典拠となった一文である。


初春令月、気淑風和、梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香


「時あたかも新春の好き月(よきつき)、空気は美しく風はやわらかに、梅は美女の鏡の前に装う白粉(おしろい)のごとく白く咲き、蘭は身を飾った香の如きかおりをただよわせている」(中西進『万葉集 全訳注 原文付』[講談社刊]の中での訳)

令和という語は、漢字研究者の諸橋轍次博士によって編さんされた13巻から成る『大漢和辞典』(大修館書店、全巻完成1960年)に収録されてはいるものの、他の使用例は見当たらず、新語とみなしてよいと考えられる。新元号の考案者となったのは、著名な国文学者で、『万葉集』の世界的権威である中西進氏である。NHKのアナウンサーが新元号の典拠を明らかにしたとき、私はすぐに中西氏を思い浮かべた。そして、日本政府も最終的に中西氏が新元号の名付け親であると認め、私の当初の予想は当たっていた。万葉集研究の草分け的存在である中西氏の著作を読まずに新元号の意味合いを考察することは不可能だ。

令和の「令」の字は、主に、「布告/条令」ないしは「命令/差し止め命令」を意味する。多くの日本人がそうだったように、私も当初は当惑させられた。「令」は「命令」の「令」と同じなのだから、この言葉は一部の人が指摘しているように、「日本が命令する」もしくは「大和に従え」という意味なのだろうか。それとも、英BBCが誤訳したように、“order and harmony”(秩序と調和)という意味なのか。あるいは、言いつけどおりに従えという陰険な警告なのか。

だが、考えれば考えるほど、そのような解釈は的外れだと思うに至った。(中西氏が平和主義者であり、憲法第9条の改正に反対する反戦グループの賛同者であることは注目に値する――この事実から考えても、令和という語が国粋主義的、排外主義的な意味合いを込めたものではないかとの懸念は当たらないようだ。)新元号に関する誤解を正すために、以下にいくつかの点を指摘し、文学的、言語学的な背景を解説して、論議の解消を試みたい。

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最終更新:6/17(月) 16:38
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