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ミャンマー特集(2) 深まる中国の浸透、日中外交が衝突する地

6/18(火) 15:20配信

nippon.com

野嶋 剛

ミャンマー最北端の地・カチン州は、中国が影響力を急速に高めながら、地元との軋轢(あつれき)が広がっていた。だが、欧米がロヒンギャ問題でこの国から離れる中、防波堤になるのは日本しかないのが現状だ。

地方で生じる中国との「不協和音」

ミャンマーでの中国の存在感は格別だ。町中に中国企業の派手な看板が並ぶ。中国人らしきビジネスマンもヤンゴンを闊歩(かっぽ)している。観光客も中国人が一番目立っている。滞在中、ちょうど中国映画のロケをやっており、そのためにヤンゴン市内の交通が大混乱に陥っていたが、市民は「中国のことだからしょうがない」というあきらめ顔であった。

ただ、中国によるミャンマーへの浸透の最前線は、ヤンゴンから離れた少数民族地帯だ。そこでは、むき出しの「現実」に出会うことができる。ヤンゴンからマンダレー経由で飛行機を乗り継ぎ、最北端のカチン州ミッチーナに向かった。

カチン族などの少数民族が暮らすカチン州は、中国・雲南省と長い国境を接する。中国の進出が、現地の人々との間に複雑な不協和音を生んでいた。

州都のミッチーナで取材中、現地メディアの知人から「記者が中国系の企業に監禁された」という情報が寄せられた。

そのメディアは毎週月曜発行の「ミッチーナ・ジャーナル」。ミャンマーの報道が自由化され、立ち上がったばかりのローカルメディアだ。市内のオフィスを訪ねると、ちょうど監禁問題に関して編集会議を開いていた。会議の終了まで待って、監禁された当の記者のムン・ムン・パンさん(26)とアジェさん(20)に話を聞くことができた。

ムンさんは、バナナ園がカチン州で急拡大し、農家から不満が出ている、という記事を書いた。翌日、バナナ園を経営する企業の男数人がオフィスに現れた。ムンさんとその場にいたアジェさんを「話し合いをしよう」と連れ出した。

会社に連れていくと、男たちは態度を一変させ、2人を別々の場所に監禁した。ムンさんには「誰から頼まれた」「話せば100万チャット(約7万円)やる」と尋問を始めた。アチェさんが携帯電話で異変をフェイスブックにアップし、救助の仲間や警察が駆けつけて2人は解放された。

この企業は実際のところ「中国系」ではないが、中国企業と密接に協力しながら、中国向けに輸出するバナナの農園を経営している。ミャンマー人が普通食べるバナナは小ぶりで茶色がかったもの。一方、中国では大ぶりで黄色いバナナが好まれる。カチンで大量に栽培されるのは中国向けの黄色いバナナで、土地を農民から安価で買い叩き、大量栽培しているとされる。

日本商社で働いた経験が長く、現在はミッチーナで日本料理レストランを経営するトゥ・ピンさんに話を聞いた。トゥ・ピンさんは、バナナビジネスのからくりをこう説明する。

「もちろん目的はバナナだけではありません。普通の人には分からないからくりがある。中国と地元企業が組んで、何倍も稼げるおいしいビジネスなのです」

彼によると、豊かな森林に生えるミャンマーの木材は商品価値がある。バナナ園を作るという理由で、樹木を全て伐採して中国に運ぶ。土地にレアメタルがあれば調べて土壌まで持っていく。その土地にバナナを育てて中国に輸出する。バナナ園の中で人の目の届かない場所では、アヘンを栽培することもある。少数民族武装勢力でミャンマー政府と戦っているカチン独立軍(KIA)もアヘンビジネスに絡んでいるとされ、警察も手を出せないという。

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最終更新:6/18(火) 15:20
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