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ブリヂストンのテストコースに潜入! 最前線の二輪タイヤ・テスト現場を取材してきました!

6/18(火) 12:27配信

webオートバイ

年間13 万本のタイヤテストを行なう開発の最前線

ブリヂストンと言えば乗用車や商用車はもちろん、二輪&四輪のモータースポーツでの活
動を含めあらゆるシーンで知られている世界シェアナンバーワンのタイヤメーカーだ。バ
イクでは高性能のタイヤ・バトラックスシリーズがお馴染みだが、そんなブリヂストンの開
発の拠点である栃木県のプルービンググラウンド(テストコース)にweb オートバイ編集部
が突撃取材! 一体、どんなテストをしているのか…??
(※取材は2018年10月に行なっています)

まずはプルービンググラウンドの説明から。ブリヂストンでは世界8 カ国、10 カ所にプル
ービンググラウンドを設けているが、その内のひとつが今回の取材先、栃木県那須塩原市に
あるプルービンググラウンドだ。ここではクルマやバイク、それに中・大型トラックやバスまで200 台を超えるテスト車両を保有しており、年間では13 万本のタイヤのテストを行なっているのだ。

今回は業務中にお邪魔するカタチで取材。タイヤのテストとはどんな仕事なのか、さっそく現場へ伺うと……やはりひたすらバイクに乗って装着するタイヤを評価することがメイン!テストは雨が降っていると評価がガラリと変わってしまうそうで、晴れた合間しか乗れないという。また、コース内は乗用車のほか、トラックやバスといった多くの車両が走っているので占有時間は決まっているそう。二輪だと週2~3回で朝8時~終業の16時まで。1日あたり200~300キロ走るという。

そして、その評価は「官能評価」と呼ばれるもので、数十項目にもおよぶ評価ポイントがある。それはグリップや接地感、それにハンドリングや安定性などの評価を行なっているのだ。一方で車両にデータロガー(車両に各種センサーにつないだログを取る機械)を装着することで、制動距離や加速タイムなどの項目を数値で評価しているという。しかし、そういった数値は全部センサーでは補えず難しいとも……。

数値評価が難しい理由をテストライダーの長原さんに聞くと「二輪は車体挙動が複雑なので数値化するのは難しいと言われています。たとえば四輪だとハンドルを切って、グリップを感じて……と、それらの作業も簡単ではないがそうした評価ができる。しかし、二輪はタイヤのプロファイルがラウンドしており、それで加重をかけた時のサスの沈み込む量を含め、数値化にはなかなか結びつけない。それと、そこ〈グリップの状態〉を数値で測るとなると、ある程度乗れる人は同じ数値になってしまう。なので、数値評価は難しく官能評価がメインになっています。あと、二輪の場合は滑ったら終わりですから(笑)」というのだ。

■テストライダーの方に一問一答。
次は業務中の合間を縫って長原さんへ質問をしてみた。

Q.二輪のテストライダーになるにはどういった課程を経るのか?
A.「ふたつある。ひとつは入社後すぐに配属される。もうひとつは入社後に希望を出すこと
で実験部へ配属になる。ある程度の希望は聞くが、まったくバイクに乗っていない人が配属
されるのは考えにくい。元々バイクに乗っている人が希望してくる場合が多い。」

Q.各テストライダーが官能評価をするといっても、個人個人で捉え方や感じ方が千差万別だと思う。そうした個人の官能評価を共通化するにはどのくらいの訓練や期間が必要なのか?
A.「評価についてのマニュアルやガイドはある。それでライダー同士でお互いに乗り合わせ
て、評価のすりあわせをおこなって評価基準を共通化していく。その期間として……個々に
もよるが大体3 年くらいかかると見ている」
※編集部メモ:なお、設計の人に意見や注文ができるのは10 年くらいかかるそう。

Q.評価はバイクの各ジャンルにあった評価をしているのか、たとえばツアラーモデルのタイヤなどは耐久性などが重視されると思うが?
A.「実はタイヤの耐久性能などは別で評価しており、このコースを絶えず周回して走らせている。一方で研究所や工場内でも、ドラムを回して(回転するドラムにタイヤを押しつけて)耐久性能を評価している。あと、タイヤの官能評価といってもオートバイありきなので、オートバイのキャラクターを引き出せるような評価をしている」

Q.二輪のタイヤはスーパースポーツやツーリングモデルでプロファイルが変わってくるが、そこでテストライダーの好みは出てくるのか?
A.「ライダーの好み、というのは確かにあるがそれよりも、そのタイヤの目標をキチッと決めて使用される状況や商品性を確立させていくので、そのライダーの好みに仕上げるようにはしていない」

Q.テストでタイヤが同じサイズでも、装着する車両で車重が違う場合は空気圧や走行条件はどうしているのか?あと、日本と欧州では同じ車両でも空気圧の指定は異なってくるが?
A.「空気圧はその車両の指定空気圧でテストしている。基本は一般道を指定の空気圧で走らせた時に性能を発揮できるようにテストしている」

Q.冷間時や温暖時ではタイヤのパフォーマンスに差が出てくるが、そこはどういう風に評価しているのか?
A.「ものすごく差があるので、いろんな環境で、季節や場所を変えて評価している。開発時もパフォーマンスに幅を持たせている」

Q.テストライダーはタイヤの空気圧の差はどのくらいの単位でわかるものか?
A.「走って行くうちに内圧がどんどん上がっていくので難しいのだが、スタート時で判別する。さすがに30(kPa)内圧が変わるとおかしいと感じるが、10(同)でも自分の感覚だともっと違うのでは、と感じるときもある」

Q.ブレーキングなどのテスト時の速度領域は?たとえばバトラックスのハイパースポーツS21とスポーツツーリングT31ではブレーキングではどのくらい違ってくるのか?
A.「ブレーキとかは100km/hに近い速度でやっている。季節変動が大きいので難しい。でも実際は20~30%異なるとかではなく、ひと桁1~9%台を超えるくらい。数%の差だと思う」

Q.純正装着タイヤと市販タイヤはどっちが良いのか?テストするのは純正装着だけ?市販タイヤもテストするのか?
A.「それは一言ではいえない。中には評価が全く変わらないタイヤもある。テストするタイヤは純正も市販も両方おこなっている」

Q.タイヤを交換した時に以前のタイヤと比べても差がわからない。その場合どのようにしたら差がわかるようになるのか?
A.「それはなかなか難しい。それがわかるようになればテストライダーになれる(笑)。でも、タイヤを変えた時に良く観察(タイヤのプロファイルや見た目・状態など)したほうが良い。それと、タイヤを変える前の状態を覚えておく。曲がりにくいとかゴツゴツしているとか、ハンドルが急に切れ込むとか……それが普段感じているのであれば、変えた時にわかるはず。それと普段からバイクに乗っている時に、常に疑問に思って観察することを心がけること」

Q.では新品のタイヤに交換してパフォーマンスを感じるポイント、感じるためのノウハウはあるのか?
A.「力を入れずにリラックスして、(タイヤの慣らしは終えて)走り出した時の方が分かりやすい。サーキットではタイム差として違いが出てくると思うが、感覚としてはスピードを上げれば上げるほどパフォーマンスがわかりにくくなる。だから、いつも走る道を力を入れずにリラックスして、同じ調子で走る方が良い。新品に変えたからといって積極的に攻めたり走ったりするのはNG。なので、タイヤが出すパフォーマンスを感じるにはハンドルにも力を入れず、受け身の状態が一番良い」

Q.最後の質問。テストライダーで大事なことは?
A.「健康です(笑)。二輪に乗るのが上手い人は星の数ほどいるので、評価する技量と分析する能力が大事」

テストライダーは再現性が大事
取材の終わりに、テストライダーをまとめる立場の実車試験部・実車試験第4 ユニットの大
堀敏行課長(肩書きは取材当時)にテストライダーにとって最も大事な事を伺ってみた。
「同じように走って、同じ評価ができないとダメ。乗るたびに違う現象が出てきた場合、そ
れが違う操作によって現象が出てきたのか、それとも同じ操作で出てきたのかでは評価が
できないから。なので、この仕事は再現性がもっとも大事」だという。

ここまで紹介してきたようにテストライダーは官能評価を基本に日々、タイヤの評価に取り組んでいる。クルマやバイクはエンジンやシャーシなど構成する部品は多岐にわたるが、最も重要な構成部品がタイヤだ。車両やバイクの性能を左右するのはもちろん、乗る人の命を預かる大切なパーツでもある。タイヤがキチンとしたパフォーマンスを生みだすのはこうしたテストライダーの評価の積み重ねがあってこそなのだ。

野里卓也

最終更新:6/18(火) 12:27
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