ここから本文です

家事をしたことがない人が行政を動かしている恐ろしさ【作家 朱野帰子さん】

6/18(火) 14:30配信

webマガジン mi-mollet

現在放送中のドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS)が話題になっています。「残業はしない」というポリシーを貫くことで、働くことと人としての幸せとを追求する主人公を描いた異色のお仕事ドラマで、原作は朱野帰子さんの同タイトル小説です。その朱野さんが、もう一つの長時間労働として描いていることで話題の作品が『対岸の家事』(講談社)。家事問題が孕む社会問題に目を向けながら、私たちがこれから持つべき意識についてお話していただきました。

“お仕事小説の名手”が次に描いた職業は、マイノリティになりつつある「専業主婦」

年々減少の一途をたどっている専業主婦。平成30年の厚生労働省調査によると、その割合は33%。64歳までの働く世代だけで見ると25%と、4人に1人しかいないことが分かっています。朱野帰子さんの『対岸の家事』は、そんなマイノリティと化した専業主婦の詩穂と、働くママ・礼子、育休中のパパ友・中谷など、様々な立場の人たちのぶつかり合いと助け合いを描いた小説。今回、専業主婦を主人公にしようと思ったきっかけは何だったのでしょう?

「構想を得たのは、1人目の子供が生まれた直後でした。初めての育児で家事の量が激増してパニックになっていたとき、近くに住んでいた主婦の友達がさりげなくサポートをしてくれたんです。私が『とにかく忙しい』とボヤくと、後日、『近くまで来たからうちの子のお古をアナタの家のドアノブにかけておくね』と置いて行ってくれて。それがそのまま保育園に着せて行けばOK、というような完璧なセットで。他にも、どのアパレルブランドの子供服が洗濯に強いかとか、地域の掲示板にしか貼り出されない子供向けイベントの情報だとか、いろんなことを、ほしいタイミングで教えてくれました。働くママではなかなか手に入れられないけれど、喉から手が出るほど欲しい情報ばかり。これはもはやプロのスキルだな、カッコいいな、と感動して。当時、専業主婦がマイノリティになりつつあるという記事を読んだこともあって、主婦を主人公にした物語を書いてみたいなと思ったんです」

しかしいざ書き始めると、自身の子育てと家事があまりに大変だったため、話はついつい暗い方向に進んでしまっていた、と言います。

「実際に書き始めたのは、2人目の子を産んだ後でした。育児も家事もさらに大変になり、どんどん追い込まれていって、気づけば攻撃的で暗い話になってしまい、何度も書き直すことに。当時は、誰も私のことを助けてくれないとか、無責任なアドバイスばかりしないでほしいとか、被害者意識でいっぱいでした。そんなとき担当編集者が、同じく子育て中の人に変わって。男性だけれど、話を聞いていると私よりも家事が苦にならないタイプで、そこから『人によって違う』という多角的な視点を物語に入れられるようになりました。性別や、世代や、育った家庭によって様々な事情があり、それぞれの言い分がある、という視点が生まれていきました」

そう語るように、『対岸の家事』に登場する人たちは、葛藤しながらも、違う立場の人たちを肯定していこうとする。勧善懲悪とは正反対の描き方が新しく、希望を感じられる物語になっています。

「自分が追いつめられていると、、うらやましいとか、ズルいとか、暗い心理に陥りがちです。ネット上にはそういった人たちのコメントが多く見られますが、そもそも不満があるからこそ書き込むわけなので、自然と攻撃的な声ばかりが入ってきてしまう。でもリアルの家事の現場では、主婦かワーキングマザーかの違いで反目し合うことってそんなにないです。働きながら子育てする私は、主婦の友達の知恵に助けられましたし、一方で、小学校のPTAに会社員の親が参加することで配布物をクラウド化するなど、効率化が進んだ、というケースも耳にします。リアルな世界では、お互いにないものを補って、必死に支え合っている事の方が多いと思います」

1/3ページ

最終更新:6/18(火) 15:36
webマガジン mi-mollet

記事提供社からのご案内(外部サイト)

スタイリスト大草直子がコンセプトディレクターを務める、ミドルエイジ女性のためのwebマガジン。ファッション、ビューティ&ヘルス、ライフスタイルの情報を配信中。

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事