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金融業界、もっと「集団左遷」マインドがほしい

6/19(水) 7:47配信

NIKKEI STYLE

「老後資金2000万円不足」問題がかまびすしいですが、読者のヤング投資家の皆さんは騒ぎに惑わされることなく、冷静に資産形成に臨んでください。参考になる情報が実は例の「高齢社会における資産形成・管理」報告書の後半に盛り込まれています。高齢社会で個人の資産寿命を延ばすために欠かせないのが金融機関による顧客のサポート。その第一の前提として「顧客本位の業務運営の徹底」について言及しているのです。金融機関における「顧客本位の業務運営」とは一体どういったものなのでしょうか?

■金融庁が「プリンシプル主義」にカジ

このコラムで度々言及しているとおり、従来の日本の金融業界のあり方を問題視している金融庁は業界にビジネスモデルの抜本的転換を促しています。監督指針の中核に「顧客本位の業務運営」という概念を据え、金融行政の方針を法令順守一辺倒のルール主義から、金融事業者の原理原則を倫理的に問うプリンシプル主義へとカジを切ったのです。
金融に限らずあらゆる商売において当然大事な「顧客本位の考え方」を殊更に監督官庁が強調し、業界に迫るのは考えてみれば意味深です。裏返せば、現状の業界スタンスが自社の利益本位に偏り顧客利益がないがしろにされてきた事実に対する、行政から業界への怒りの表現ともとれます。
金融機関にとっての「顧客本位の業務運営」とは具体的にはどのようなものでしょう? ヤングの皆さんが見ると具体的にイメージしやすいテレビドラマがあります。今話題の「集団左遷」です。

■「集団左遷」にみる顧客本位

業績不振の大手銀行が支店の統廃合を進めるリストラの中で、廃店の危機にひんする支店長を福山雅治さんが演じています。部下の支店メンバーと一丸となり、本部とのあつれきを闘うサラリーマンの悲哀共感ストーリー。私も毎回、痛快な思いで見ています。
廃店を免れるには、本部が課す新規融資のノルマ達成が必須条件で、毎回支店長自ら新たな貸し出し案件に奔走します。でもノルマ達成のための融資実行が真に顧客のためになるのか……。福山支店長は支店の利益と顧客本位のはざまで悩みます。そして、たとえ顧客が求めたとしても、結果的に顧客の幸せにつながらないと判断すれば、支店メンバーを納得させた上で融資をせず、ノルマ達成より顧客の真の利益を優先させます。その姿勢を「銀行員のプライド」と表現していてカッコいいのですが、この行動こそが「顧客本位の業務運営」です。
番組の中で繰り返し出てくるのが「お客様の夢の実現のために」というセリフです。金融という産業のミッションのひとつが顧客の夢や目標の実現であり、そのために必要な資金提供を行うことこそが銀行業の社会的使命であるという強いメッセージがそこには含まれています。
また、このドラマには特に地方銀行など地域金融機関の根本的な存在意義に関するテーマ性も存分に盛り込まれています。すなわち地域金融は地元に必要な産業維持や事業再生、そして新しいビジネスの育成といった地域経済の活性化を支える金融機能を担っているということです。
地域経済のためにリスクをとって成果を出すことで、地元の社会・生活者が元気で豊かになり、結果としてそこに立脚する地域金融機関も密着して健全に存続できるということです。ドラマでは、この地方経済のあるべき金融サイクルの姿も投影されています。もしかしたら目下、金融改革にまい進する金融庁の監修ではないか、と思ってしまうほど、金融業界に対するメッセージ性の強い内容になっています。

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最終更新:6/19(水) 12:15
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