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大地震で海面水位の上昇が長く加速、どういうこと?

6/19(水) 18:22配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

米領サモアで世界平均の5倍の速さに、「重要な問題」と研究者

 2009年9月、南太平洋のサモア諸島沖でマグニチュード8.1という大きな地震が発生した。地震による津波で、サモア独立国、米領サモア、その他付近の島々は破壊され、180人以上の死者が出た。

ギャラリー:水浸しの世界 写真6点

 ところが、不運はそれだけではなかった。地震の影響で、5万5000人以上が住む米領サモアでは世界平均の5倍の速度で海の水位が上昇しているのだ。この研究結果を報告する論文が、5月25日付けで学術誌「Journal of Geophysical Research:Solid Earth」に発表された。

 サモア諸島は、世界中の島や沿岸地域と同様、地球温暖化による海面上昇に直面している。おまけに、大地震の影響で地盤が沈下し続けているという。状況は特に米領サモアで深刻だ。気候変動による分に加え、50~100年後には島の地盤が30~40センチほど沈下するせいで、海面の水位がさらに上昇すると予測された。

 巨大地震の影響は場所によって異なるが、沿岸部ではこのように、海面の水位が長期にわたり上昇することもあるという事実はあまり知られていない。その問題に焦点を当てたのが、今回の論文だ。

 研究を率いたオーストラリア、ニューキャッスル大学のハン・シンチャン氏は、海面上昇に関する地元政府の文書について、「気候変動問題はよく議論されていますが、地震とそれに関連する地盤沈下の影響に関しては見過ごされがちです」と語った。

「とても重要な問題で、ぜひ取り上げるべきです」と、ニュージーランドにある地球科学コンサルタント会社「GNSサイエンス(現地マオリ語でテ・プ・アオ)」の地球物理学者ローラ・ウォレス氏も同意する。「サモア諸島などでは、相対的な海面水位の変化に大きな影響を与えます」。なお、ウォレス氏は今回の研究には参加していない。

地震にゆっくりと反応する地形

 地球の表面は、プレート運動のおかげで常に形を変えている。その働きが最もよく感じられるのは、地震が発生したときだ。一般的に、地震はプレート同士が衝突したりこすれあったりして、ストレス(応力)がたまることで発生する。たまったエネルギーが一気に解放されると、地殻が揺さぶられる。

 しかし、大地震の影響は全てがただちに起こるわけではない。ウォレス氏によると、硬い地殻と異なり、その下にあるマントルの岩は柔らかく、常に対流し、地表の急な変化に対してゆっくりと反応する。そのせいで、地震から数十年かけて陸地が隆起や沈下をし続けることがあるのだ。

 この長期的な地形の変化に興味を持ったハン氏は、米国とドイツが共同で打ち上げた2機で1対の人工衛星GRACEのデータを何年もかけて細かく分析した。2002年から2017年まで運用されたGRACE衛星は、1機の後をもう1機が追いかけるようにして地球を周回し、わずかな重力の変化を感知する。それによって、陸地の質量や地形の変化がわかる。

 2009年の地震の場合、1日単位で気付けるものはなかったが、長期間にわたりデータを調べてみると、サモア諸島で何かが確実に変化していた。

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