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「この1年は重要。淡々と準備するだけ」水泳選手・幌村尚が遂げた成長の証

6/19(水) 19:00配信

Tarzan Web

往復2時間の距離を歩いて学校に通った“野生児”は、決して恵まれてはいない環境を逆手に取って成長した。そして東京オリンピックの有力選手にまで上り詰めた。(雑誌『ターザン』の人気連載「Here Comes Tarzan」、No.764より全文掲載)

他の選手にはない脚の太さには理由がある。

200mバタフライの新星、幌村尚。世界にドンッと飛躍できる可能性を十分に秘めている選手である。幌村の泳ぎには、いくつかの特徴がある。そのひとつが、キックの強さだ。

写真でもわかるが太腿がかなり太い。競泳選手で、ここまで脚が太い選手は見たことがない。スイマーの体型は、上半身が大きく、それに比べると下半身はややスマートというのが普通である。幌村の脚は、競輪とかスピードスケートの選手のようなのだ。そして、これには理由がある。

「小学校が遠かったんです。片道1時間かけて山道を通いました。行きは歩いたけど、帰りは走ったりしてましたね。それから、帰り道では友達と寄り道して、笹藪に入っていって山に登ったりとか。マムシとかタヌキなんか普通にいました。野生児みたいな感じだったんですよ」

まるで、ケニアのマラソンランナーのエピソードのようである。しかも、学校でもよく動いた。1時間目から6時間目までのすべての休憩時間で、サッカーをして走り回っていたというのだ。まさに、寸暇を惜しむとはこのことだろう。

「そんなことをずっとやっていたから、足腰が強くなっていったんじゃないかと思っているんです。本当かどうかはわかんないんですけどね」と、幌村は笑うのである。

2018年、彼は水泳関係者のみならず、多くの人を驚かせた。それは4月に行われた日本選手権の男子200mバタフライの決勝だった。

ここでは、リオデジャネイロ・オリンピックで銀メダルを獲得した坂井聖人や、一昨年の世界選手権で銅メダルの瀬戸大也など、日本を代表するスイマーが勢ぞろいしていた。誰が頂点に立つのかを予想しにくいレースでもあった。幌村はこの戦いを制して、見事に日本一の栄冠を勝ち取ったのだ。

幌村の泳ぎは圧巻であった。100mのターンから150mまでを30秒を切るタイムで泳ぎ、瀬戸、坂井を振り切ると、そのまま逃げ切ってしまったのだ。他を置き去りにするブッチギリの勝利であった。そして、タイムがまたすごい。1分53秒79は、彼の自己ベスト。ただ、彼はこのことにそれほど大きな喜びを感じていないようなのだ。

「優勝したということに関しては、よくわかんないというか…。親が会場に来ていたので、優勝を見せられたというのはうれしかったですが。泳いでいて、周りのことを気にするタイプじゃないんです。だから、瀬戸さんや坂井さんに勝ったということを、特別な感じでは捉えていません。

ただ、いいタイムが出たことはよかったと思います。僕はタイムにこだわっていきたいんです。順位が上でも、記録が悪かったら、うれしさは半減してしまいますからね」

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最終更新:6/19(水) 19:00
Tarzan Web

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