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コカイン栽培へと流されるコロンビアの住民たち

6/19(水) 12:21配信

Wedge

 コカインの原料となるコカの葉は南米原産の植物でアンデス山脈に暮らす先住民族は医療や儀式に用いてきた。

 コロンビアで訪ねたある民族の家庭では、自宅の敷地でコカの木を栽培し、病気の際はその葉を煎じたお茶を飲む。

 医療行為の他に、身体や土地から悪いものを取り去る「お祓い」「お清め」にも用いる。家族や近隣で事故など悪いことが続くと司祭を招き、コカの葉を咀嚼し儀式を行う。

 コカはその民族にとって、肉体や精神、空間を「良い」状態に保つための大切な植物だ。コロンビアで違法とされるコカ栽培は「先住民族居住区」内に限り、伝統活動として一定量の栽培が認められている。

 しかし、近年蔓延する貧困から、栽培が認められていない地域でも違法的な形で麻薬産業が広まった。貧困と麻薬産業に振り回される先住民族の青年の話をしたい。

届いた1通のメール

 「日本で働きたい」

 昨年、コロンビアに暮らす友人からメールが届く。彼はマウロという26歳の青年だ。

 マウロとの出会いは2007年、山岳地帯を取材する中で彼の家族と知り合ったことがきっかけだった。以来、親しい付き合いが今も続く。彼のメールにはこう書かれていた。

 「元気かい?オレ、どうしても日本で働きたいんだ。どんな仕事でもする。面倒なこと言ってごめんな。でも、こっちには仕事がないんだ」

コーヒー生産地でのコカ栽培

 マウロが暮らすのはコロンビア南西部カウカ県の山岳地帯で、コーヒー産地として知られている。家族単位でコーヒー栽培を営む住民が多い。

 コーヒーは住民の貴重な収入源だ。マウロの家では曽祖父の世代に始まった。「カウカ産コーヒー」は日本でも目にする一大産地だが、急峻な斜面が続くこの山の耕作地は狭く、家族単位の小規模農家は収量も限られる。年に1度の収穫で大人数の家族を養うのは難しく、家畜や他の農作物の出荷と合わせた生活をしてきた。

 近年、トウモロコシや豆類の価格が安い輸入作物の影響もあって下がり、収入の柱であるコーヒーも価格変動や病害のため不安定になった。その中でコカがより安定した収入源として生活に結びついた。コーヒーの農閑期に近隣のコカ栽培地へ収穫の出稼ぎに出る人が増え、自家消費向けの作物からコカに転作する人も現れた。

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最終更新:6/19(水) 12:21
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