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<青い空白い雲>「引きこもり息子」を殺した"上流国民"の家庭道徳観?〈サンデー毎日〉

6/20(木) 12:57配信

mainichibooks.com

 ◇牧太郎の青い空白い雲/723

「上流国民」という言葉は嫌らしくて好きになれなかった。特定の人たちが妙に皮肉っぽく使う「ネットスラング」の類い。無視していたのだが、4月19日の悲惨な交通事故が「上流国民」という言葉に市民権を与えてしまった。

 この日の正午過ぎ、東京・池袋で、87歳の高齢ドライバーが運転する乗用車が暴走。2人の母子が死亡。多くの怪我(けが)人も出した。大惨事だった。しかし、運転手はなぜか逮捕されなかった。

 ネットが詮索を始めた。「運転手が元高級官僚(旧通産省工業技術院長)という上級国民だったから逮捕されないのだ!」という指摘が相次いだ。

 上流国民なら罪にならない?まさか......法は万人に平等だ。そんなことは断じて許されない。

 多分、本人が骨折して、精神的ダメージも大きく、留置場に入れてしまうと「予期せぬ事故」が起こるかもしれない!と警察は判断したのだろう。回復を待って逮捕されるものと思っていたが......退院後も「在宅捜査」だった。

 やはり「上流国民」なるものは特別待遇を受けるのか?

 そういえば、例の森友事件で「公文書改ざん」を疑われた財務官僚は無罪放免になった。やっぱり「上流国民」、特に「高級官僚」は特別扱いなのか?

    ×  ×  ×

「上流国民」が"息子殺し"をしでかしてしまった。

 76歳の元農水事務次官・熊沢英昭容疑者のことである。家庭内暴力を振るう、引きこもりの44歳の長男が、自宅隣の小学校の運動会の音に腹を立て「うるせえな。ぶっ殺すぞ」と騒ぐ姿を見た。児童らに危害を加えるのではないか?と恐怖に襲われ、つい我が子を殺害してしまった。

 容疑者の体には複数のアザが残っていた。日ごろから長男から暴力を受け、心身ともに限界を感じ、追い詰められた末の"究極の選択"だったのだろう。

 多くの人が同情した。当方もちょっと泣けた(彼が次官の頃、JRAの経営委員だったので、面識もあった)。

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最終更新:6/20(木) 12:57
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