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VRで見る歌舞伎 津田大介「両方の世界広げるかも」

6/20(木) 10:12配信

NIKKEI STYLE

さまざまな場面で活用されている「VR」(仮想現実)。この最新技術を「歌舞伎」という伝統芸能と組み合わせたのが、松竹が手掛ける「VR歌舞伎」だ。世界各地でVRコンテンツを取材してきた津田大介氏が実際に体験して感じたのは、歌舞伎とVR、両方の世界を広げる可能性だった。

◇  ◇  ◇

今回、体験したのは兵庫県豊岡市出石(いずし)町にある永楽館で撮影された「永楽館歌舞伎」。歌舞伎俳優の片岡愛之助さんが10年以上にわたって行っている公演を、2018年10月、4K VR撮影したものだという。実際には公演すべてを収録しているそうだが、僕が見たのはそれを3分程度にまとめたダイジェスト映像だ。

実際に見て、そのリアリティーに驚いた。永楽館は明治34年に開館した近畿で現存する最も古い芝居小屋。収容人数368人という小さな施設で、観客は椅子ではなく座布団に座って舞台を見る。その最前列にカメラが置かれているのだ。

役者との距離が非常に近く、所作や表情、着ている衣裳(いしょう)の模様や質感までしっかりと見ることができる。舞台から視線を外すと、周囲に座る人たちの表情、そして大正11年ごろの姿に再現されたという小屋の様子が目に入ってくる。花道も近い。4Kで撮影された映像はクリアで没入感があり、劇場の雰囲気も含め、とても楽しむことができた。

■実際で見るのと異なる魅力

僕は芝居が好きでよく見にいくのだが、実はこれまで歌舞伎を劇場で見たことはなかった。今回のVR歌舞伎を制作した松竹の子会社ミエクル(東京・中央)の井上貴弘社長によると「歌舞伎よりも先にVR歌舞伎を体験したのは津田さんが初めてかもしれない(笑)」。いい機会なので、VR歌舞伎を楽しんだ直後に、東銀座の歌舞伎座を訪れ、実際の舞台で歌舞伎を鑑賞することにした。


歌舞伎座で見た歌舞伎とVR歌舞伎を比べると、劇場の雰囲気や音の響きなどは、当然ながら迫力が違う。ただ小さな永楽館に比べると歌舞伎座の収容人数は「1808席+幕見席」とかなり大きい。僕が見たのは2階席で、舞台や花道とは距離があった。全体を見渡して歌舞伎の華やかな雰囲気を感じたり、舞台全体の動きを追うにはある程度離れていたほうが見やすい。しかし、VRで体験した細かなディテールは見えない。2階席から双眼鏡で舞台を見ていた人がいたが、質感や迫力という点はVR映像のほうが満足度は高いのではないかと考えたほどだ。

芸術監督を務める「あいちトリエンナーレ2019」(8月1日~10月14日)でVRを活用した展示ができないかと、ここ数年、さまざまなVRコンテンツを体験してきた。アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「CARNE Y ARENA」に代表されるような、完成度の高い作品もあるが、正直、VRで撮影しただけという質の低いものも少なくない。そんな中で、VR歌舞伎はその世界に没入できる、魅力的な体験に仕上がっていた。

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最終更新:6/20(木) 12:15
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