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「答えがないからこそ向き合い続ける」精神科医・星野概念が考える「対話のカタチをした薬」後篇

6/20(木) 12:12配信

GQ JAPAN

精神科医でミュージシャンという異色の肩書きをもつ星野概念さんに、カウンセリングについて話を聞いた。その後篇。

【この記事を読む】カウンセリングってなんだろう?

傾聴と共感

──星野さんといとうせいこうさんの対談本『ラブという薬』では、「傾聴と共感」が重要だと語られています。そのためには、患者さんとの時間をかけた対話が必要となってくるのでしょうか。

星野:まずはとにかく患者さんの話を聞くことに徹します。そして、共感できる部分がわかってきたら共感する。そのことがなによりも大事ですね。ほかにも、場合によっては認知行動療法など、専門的な心理療法の考え方を用いることもあります。

患者さんにとって、話をすること自体がカタルシスを得る行為でもある。日常生活において、なにも気にせずに話を聞いてもらうことって、じつはあまりないと思いませんか? 医者には守秘義務があるので、診察室のなかではなにを話してもいい。そうした時間を持てるというだけでも、気持ちは楽になると思うんです。なかにはあまり話をしてくれない患者さんもいるので、難しいところではあるのですが……。

──そういう患者さんの場合は、時間をかけることで話をしてくれるようになるものなのでしょうか。

星野:たとえば、つねに怒っていて、こちらを罵倒してくるような患者さんがいたとします。そういう時に説教したりするのはどう考えても精神科医の仕事ではないですよね。そうではなくて、どうしてそういう言動をとっているのか、いつからそうなのかということを、本人やまわりの人に聞きながら、その状態自体を理解するように努めています。

SNSにおける居場所とは

──ここ最近、診察のなかで感じる患者さんの傾向はありますか?

星野:単なる偶然か、もしくは土地柄ゆえかとは思うのですが、病院によって受診する患者さんの傾向が違うという印象があります。前に勤めていた病院は認知症の方が多く、今年度から勤務するようになった大学病院は前の病院に比べて人間関係などに悩んでいる若い方が多いかもしれません。

──「人間関係に悩む若い人」といえば、SNSについての悩みが多かったりするのでしょうか? 『ラブという薬』のなかでも、度々SNSについてお話しになっていましたね。

星野:SNSの悩みがメインであるという患者さんには、じつはほとんどお会いしたことがありませんが、SNSに疲れてしまったという方はいますね。診察において顕著な悩みとまでは言えませんが、僕の知り合いにはそういう悩みを持った人がとても多いです。

TwitterをはじめとしたSNSは、いまやひとつのコミュニティになっています。攻撃的な投稿に傷つくこともあるだろうし、自己肯定感の低い人は自分から発信することができず、コミュニティに馴染めていないと感じてしまうのではないでしょうか。ある種、言論の場のようになっていて、あたかも政治的なことやビジネスについて語れることが正しいとされる場所になってきているようにも感じます。そのなかでは、発言力を持たない人が居心地の悪さを感じてしまってもおかしくないと思います。

──SNSは、最初はむしろ、社会のなかで居場所を見出せない人がつながるツールでもあったはずです。それがある程度時間が経ち、様態が変化しているように感じます。

星野:「心の居場所」の問題ともつながるのですが、「自分はここにいていい人間なんだろうか」と考えてしまうことは、非常に居心地が悪く、不安なことですよね。

──SNSに限らず、現実社会においては、“どこかに存在するため”の役割や意見が必要とされてしまいます。

星野:人には、なにも考えずにただそこにいられるような空間というのが大事なんです。「ただそこにいること」は、すなわち、無意識に自分の存在を自ら肯定することにつながっているので、本来とても充実したことなんです。たとえば医療現場に設けられているデイケアや自助グループ、集団療法を行うスペースなどは「ただそこにいていい空間」と言えます。日常生活のなかでも、そう思える場所が増えればいいなと思うんです。

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最終更新:6/20(木) 12:12
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