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南米では正直者がバカを見る?日本代表「走るサッカー」の限界。

6/20(木) 8:01配信

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 「あれ? チリってこんなに上手かったっけ?」

 日本戦を見ての率直な印象だ。

【秘蔵写真】14歳にして相手3人をぶち抜く久保、ロン毛時代の長谷部&本田、ぎらついていた頃のカズ。

 2015年、チリが開催国として悲願の初優勝を遂げたコパを観戦したが、このとき彼らが上手く見えたことは一度もない。チリといったら、速くて激しくて、そしてなによりも汚いチームだった。

 そのチリが上手く見えたのは、日本の守りが甘かったということに尽きる。

 もちろん日本は五輪世代が中心で、準備も十分ではない。ベストメンバーだったら、という言い訳はできる。とはいえ日本とチリには、いや、日本と南米のサッカーには大きな力の差があることは間違いない。

出足が鈍くなった後半は……。

 前半の日本は予想以上の健闘を見せ、3連覇を狙うチャンピオンを手こずらせた。中島を中心に一人ひとりが積極的に前にボールを運ぶ姿勢を見せ、GK大迫も目の前に迫ってくる敵を巧みな足技でかわす余裕を見せた。18歳の久保も見せ場を作った。

 だが、勝負になったのは前半まで。54分に2点目を許すと攻め手がなくなり、82分、83分と立て続けにゴールを奪われた。

 0-4というスコアが意味するものはなにか。私は、走力頼みのサッカーの敗北ではないかと考える。

 日本がまだ元気だった前半は、チリのパスワークについていくことができた。だが、後半はさすがに疲れが目立ち始める。後半立ち上がりも前から果敢にプレッシャーをかけたが、その背後を巧みに突かれるようになると、ボールへの出足が鈍くなり、チーム全体が下がり始めた。

 こうなるとペースは完全にチリのもの。日本は自陣に多くの選手がいるものの、敵のすばやい左右の揺さぶりについていけず、サイドを深くえぐられて失点を重ねることになった。

南米相手に美徳は通用しない。

 勝負になったのは、走力があった前半だけ。走れなくなってからは、寄せてもダメ、下がってもダメとお手上げになってしまった。

 日本サッカー界では長い間、走力が重視され、走り勝てることがいい選手の条件とされてきた。しかし、走力は万能の薬ではない。走力ももちろん大切だが、走力ばかりを強調するとボールを追いかける悪循環にはまりやすく、この試合のようにいいように崩されてしまう。

 気になるのは、森保監督のコメントだ。

 前日会見も含めて、監督は「チャレンジ精神」「勇敢」「アグレッシブ」というフレーズを再三再四、口にした。私たち日本人がいかにも好みそうなフレーズだ。

 とはいえ、ここはアジアではない。南米だ。正直なことが美徳にならず、むしろ墓穴を掘ることになる怖い怖い世界である。南米の人々は「日本はたくさん走るぞ」と聞いたら、怖がるどころか「それならたくさん走らせて、動けなくさせてやれ」と考えるだろう。

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最終更新:6/20(木) 8:01
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