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トルシエがチリ戦後に指摘した弱点。「ベルギー戦のラストを思い出す」

6/20(木) 11:05配信

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 「試合終了の1時間後に電話をくれ」

 事前にフィリップ・トルシエにはそう言われていた。ベトナム時間の午前9時、ヨーロッパ時間の午前4時である。

【秘蔵写真】14歳にして相手3人をぶち抜く久保、トルシエ時代に試合中ニコニコしていた俊輔&中田英寿、小野ら黄金世代の若き日。

 だが、試合の30分後にトルシエから次のようなメッセージがあった。

前半は十分に評価。上田は良かった。

 「日本が試合中に作り出したチャンスの数を考慮すれば、結果は試合の現実を反映してはいない。違いはゴール前の効率の差だった。チリの効率と個の経験、成熟さが違いを作り出した。しかし日本に勇気を与える内容だった。

 スタートからテンションの高い展開。ともにハイプレスをかけあったために、高度にテクニカルなプレーとパスの精度を求められる試合となった。日本が作り出したリズムが、チリのレベルを上げさせる結果となかった。前半はともに攻撃的なプレーで試合が完全に均衡。チリが先制点を決めるにはCKが必要だった。

 後半の日本は前半ほどではなかった。日本に前半のハイペースの疲れと、チリの成熟と経験が徐々に全面に出てきて、日本はコレクティブなプレーを維持しながらも攻撃はカウンターが頼りになった。しかしその攻撃は相変わらず危険で、13回のシュート機会のうち1回ないしは2回は決まっていてもおかしくはなかった。

 3-0となってからは試合が落ち着き、若い日本の守備陣に気落ちの面が少々見られた。最終的なスコアはシビアだが、日本のプレー、特にチリと対等に渡り合った前半は十分に評価に値した。大会の今後に向けてもいい経験になったハズだ。

 選手では上田(綺世)が良かった。中島(翔哉)も前半は素晴らしかった。他には久保(建英)と中山(雄太)、さらに植田(直通)と冨安(健洋)も屈強さを示した」

 メッセージに気づいてすぐにハノイの彼のもとに電話をかけ、インタビューが始まった。完敗に終わった試合をなぜポジティブに評価したのか。トルシエが語った。

プレーの多様性を日本は欠いた。

 ――テクストは受け取りました。とても面白い試合でしたが、あなたが予想した通りの展開になりました。

 「そうだが、試合はとても技術レベルが高かった。とりわけチリがそうで、集中していたし技術も素晴らしくアグレッシブだった。前半の日本はとてもよく組織されていて、コレクティブでプレスも効いていた。だがそれは当然のことで、初戦で日本がそんなふうにプレーできることはわかっている。

 試合内容を考慮すれば――特に前半のそれを考えたときに、チリは自分たちのプレーのレベルを上げざるを得なかった。相手を覚醒させてしまったことが日本には不利に働いた。積極的にプレスをかけてリズムを作り出したが、そのコレクティブなプレーが、相手にも同じリズムでプレーすることを強いた。

 日本のテンポは少し早すぎたように私には感じられた。将来的には少し緩めたほうがいいだろう。だが日本に選択肢はなかったのも事実で、もしテンポを緩めてしまったら、プレーの効率性を欠くことになったからだ。

 日本が強くあるためにはインテンシティが必要であるし、プレスや切り替えの速さ、プレーの速さが必要だ。しかし残念ながらプレーの多様性を日本は欠いた。

 スピードとテクニックでは申し分なく、しかもそのスピードは見るものを驚かせたし、ディシプリンの高さにも驚いた。しかし試合全体を通して明らかになったのは日本の限界だった。とりわけ個の部分で、チリの成熟と経験が目立った。日本との差を作り出したのは選手の個の価値だった。

 つまりコレクティブだけでは十分ではないということだ。コレクティブは試合の60%しか反映しない。日本はその部分ではとてもよくプレーした。しかし個に関しては久保と中島を別にすれば――このふたりは違いを作り出していたが――日本が露呈したのは彼らの限界だった。

 それは当然のことで、チームは若く経験と成熟を欠いている。選手はA代表出場経験のないものが過半数だった。だからいい試合ではあったし、経験を得るという目的はある程度達成できたともいえる。

 とはいえ初戦で0-4の敗戦というのはシビアだ。私にしてみれば、3-4で終わるべき試合だった。作り出したチャンスの数などを考えればそれが妥当な結果だ。3-3でも……まあチリが多少優位だったから、3-4が結果としていいところだろう」

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最終更新:6/20(木) 14:16
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