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子供に生前贈与しても「思ったほど感謝してもらえない…」という声は多い

6/21(金) 16:00配信

マネーポストWEB

 日本人の寿命は年々延び、親が持っている財産を子世代に相続するのは退職から30年近く後になる。しかし、その時には子世代も教育や住宅の資金が必要な時期を過ぎていることが少なくない。そこで子世代に資金が不足する時期に、財産を前渡ししようという意識が高まっている。

 シンクタンク「フィデリティ退職・投資教育研究所」が退職金を受け取った男女8630人を対象に2015年に行なったアンケート調査によると、そのなかで「使い途」を聞いた質問への答えで最も多かったのは23%の「将来、生活費に使う」。先行きの見えない老後のために当面は貯金をするという消極的な選択が1位だった。僅差の2位は「ローンの返済」(21%)、3位「日々の生活費(19%)」と続く。このほか使途の項目の上位に「贈与」が入っている。

 愛知県内で妻と2人暮らしをする高田さん(78・仮名)も贈与を考えた一人。60歳で定年退職してから数年後、1500万円の退職金のうち、贈与税の非課税枠ぎりぎりの110万円を5年間にわたり毎年、東京で家を買った息子に贈与した。

 家族だからこそ助け合おうという気持ちで自分から言い出したことだが、それから10年を過ぎた今、高田さんは複雑な気持ちを抱いていると打ち明けた。

「昨年に認知症を発症した妻の介護は、膝に持病がある私には手にあまるところがあって、老人ホームに入れようかと考え始めたのです。退職金もだいぶ取り崩しており、入居一時金を払うと手元のお金に不安が出てくる。その本音を息子にそれとなく話したのですが、思いの外そっけないんですよ。彼も楽でないのはわかるが、私たちが自分の蓄えから援助してあげたことなんて、当然だと思っていたのかな」

 こうした親子間の意識の違いが表面化することは決して珍しくないという。「夢相続」代表の曽根恵子氏は、こういう。

「“せっかく贈与したのに、思ったほど感謝されない”という声はよく耳にします。退職後の人生の長さを考えるとサラリーマンの退職金の額は決して多くはなく、受け取った本人の世代で使い切るのが基本です。一度は贈与したけど、後になって足りなくなったから援助してほしい、というのでは結果的に子世代に負担をかけることになる」

 政府は、リタイア後世代の資産を子・孫世代へと移転させることで消費の活性化を狙う意図から、贈与については様々な優遇制度を設けている。それに乗せられて、どんどん資産を渡していると、手元資金が足りなくなるリスクがあるのだ。

「少なくとも、“いつか必要になるだろうから”という考えで贈与するのはやめたほうが賢明でしょう。住宅や教育資金として、必要な分だけを渡すという考え方を持った方がいい」(同前)

※週刊ポスト2019年6月21日号

最終更新:6/21(金) 16:00
マネーポストWEB

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