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ヒマラヤの氷河消失が倍の速度に、スパイ衛星で判明、8億人に影響の恐れも

6/21(金) 17:05配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

機密解除された米国の衛星写真を活用

 世界最高峰のエベレストをはじめ、7000メートル以上の山々がつらなるヒマラヤ山脈。その雪と氷の量は、南極と北極に次いで世界3位だ。そのヒマラヤから、大量の氷河が消えたことが判明した。2000年から2016年にかけて毎年、量にして75億トン、厚さにして43センチもの氷が解け続けたという研究結果が、6月19日付けの学術誌「Science Advances」に発表された。

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 これは1975年から2000年までの2倍のペースであり、氷の消失が気温の上昇とともに加速していることが浮き彫りになった。また今後、氷が消えることによって、ヒマラヤの麓のアジア各地に暮らす何億もの人々が水不足に陥る恐れもある。

 この論文は、過去40年間でヒマラヤの氷河に起きた変化を初めて包括的に調べた研究だ、と論文の著者である米コロンビア大学ラモント・ドハティ地球観測所のジョシュア・モーラー氏は言う。

「今回の研究は、気候変動による気温の上昇に伴って氷河が消失していることを明確に示しています」と話す同氏の推定では、過去40年間でヒマラヤから4分の1もの氷が失われたという。

 地上の観測所のデータを集めたところ、ヒマラヤの気温は、1975年から2000年の平均より1℃上昇したことがわかった。気温の上昇によってどれだけの雪や氷が解けるかを計算したところ、氷河をこれだけ大量に失わせるのに十分な上げ幅であることが確認された。

「1℃の上昇は、とても大きな変化です」と論文の共著者であるラモント・ドハティ地球観測所のイエルク・シェーファー教授は話す。「最終氷期の最中でさえ、年間平均気温はわずかに3℃低かっただけなのですから」

氷河をスパイ

 米国のスパイ衛星がなければ、気温の上昇によってヒマラヤで氷が解けていることについて、これほど明確な証拠は得られなかっただろう。複数打ち上げられた軍事衛星KH-9ヘキサゴンが、1973年から1980年にかけて、この地域を撮影していたのである。

 モーラー氏らは、1970年代当時の氷河の厚さと大きさを知るために、機密解除された衛星画像を基に3Dモデルを作り上げた。これを最近のNASAの衛星画像と比較し、氷の厚さの推移を調べた。この方法により、ヒマラヤにある氷の55%を占める、比較的規模の大きい650もの氷河について、過去40年間の変化を調べることができた。

 ヒマラヤの氷河は、物理的にも政治的にも近づくのが難しい危険な地域にあるため、グリーンランドの氷河に比べるとはるかに研究が少ない、と同氏は言う。総延長2400キロのヒマラヤ山脈は、インド、パキスタン、アフガニスタン、中国、ブータン、ネパールの5つの国にまたがっている。

 ヒマラヤの氷や雪は、インダス川、長江、ガンジス川、ブラマプトラ川といった大河の水源だ。今回の研究対象には、隣接する広大な高山地帯であるパミール高原、ヒンドゥークシュ山脈、天山山脈などは含まれていないが、それらの地域でも同じように氷の融解が進行中であることを示す研究結果がある。

 5月29日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された別の論文によれば、目下のところ、氷河が安定しているときの1.6倍もの水が解け出しているという。そのため、季節的に洪水が発生し、氷河湖もいくつも形成されており、決壊して壊滅的な洪水を招く危険性がある。2012年5月にネパールのポカラ近郊の村々を襲った洪水では、60人超が犠牲となり、家屋やインフラも破壊された。

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