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増え続ける男性DV被害者......「恥ずかしい」と誰にも相談できない

6/21(金) 18:49配信

ニューズウィーク日本版

──最近、各国で声を上げる被害者が増えてきた

ドメスティック・バイオレンス(DV)「家庭内暴力、配偶者間暴力」という概念が日本でも定着して久しい。一般的に女性が被害者として語られることが多いが、実際には女性のパートナーからの精神的・肉体的な暴力に苦しむ男性も少なくない。

男性のDV被害を見た時の周囲の人々はどう反応するのか動画

これまで男性の被害者は「恥ずかしい」「信じてもらえない」などの理由で誰にも相談できず、隠し通すケースが多かった。しかし最近、各国で声を上げる被害者が増えてきたようだ。それに伴い支援団体も増えてきたが、ドイツではこの度、2つの州政府が公的支援サービスを開始することを発表した。

■ 増え続ける男性DV被害者

DVというと、男性によるパートナー女性に対する暴力、というイメージが一般的だ。だが、実際には男女間における男性の被害者も少なくない。アメリカでは今年に入って、自分の容姿に関する問いに返事をしなかった内縁の夫を殴った女性や、ボーイフレンドの性器を握りつぶし出血させた女性などが逮捕されている。どちらも20歳すぎの若い女性だ。

イギリスの最新調査(2018年3月)によると、前年のイングランドとウェールズのDV被害者は女性約130万人、男性約69万5千人とされる。調査対象となった男性(16~69歳)のほとんどは金銭的な圧迫や脅迫、ストーカー被害など、精神的な嫌がらせを受けているようだが、約半数は身体的暴力、さらに5%は性的暴力も受けている。増え続ける犠牲者に対処するために、南ウェールズ大学などが救済プログラムを進めている(BBC)。

■ 4人に1人が被害に

一方、ドイツ警察の発表によると、ドイツでは昨年、全DV被害者の約18%にあたる2万4千人弱の男性がレイプや殺人未遂などを含む暴力の被害にあったとされる。

ようやく明るみに出てきた男性のDV被害だが、何も最近始まったことではないようだ。2005年のドイツ政府の男性に対する暴力をテーマとした調査でもすでに「長期交際における暴力」の項目があり、インタビューを受けた196人のうち、4人に1人がパートナーから何らかの肉体的暴力を受けたことがあると報告している。うち、約10人は1つ以上の後遺症を抱えており、また同人数が生命の危険を感じたことがあるという。調査の対象は基本的に両性愛カップルなので、同性愛カップルにおける男性の被害者は含まれていない。

■ 誰にも相談できない男性被害者

これらの数値はしかし、実際よりもだいぶ低いと考えられている。上記ドイツ政府の調査でも、男性被害者の誰一人として警察に通報していないという。また、約半数は、暴力に対する報復もしていない。最近、声をあげる男性が増えてきたとはいえ、やはり「女性から暴力を受けている」ことを「弱さ」と結びつけ、「男らしくない」「恥ずかしい」などと世間体を気にしてうち打ち明けられずにいるようだ。

「信じてもらえない(だろう)」という諦めもあるようだ。DVにおいては女性が被害者である場合が圧倒的だからだ。事実、男性がやり返してくることを見越して先に暴力をしかけ、男性が反抗した途端に警察に通報する女性もいるという。このような女性はしかし、男性だけでなく、DV被害に苦しむ数多くの女性たちの立場をも貶めていると言えるだろう。

■ ドイツの2州が公的支援プログラムを

被害が知られていたにもかかわらず、ドイツではこれまで男性DV被害者をサポートするシステムはほぼ皆無だった。性別にかかわらずDVの被害者を救済するべきであると考えたバイエルン州とノルトライン=ヴェストファーレン州は共同声明で18日、州政府として男性DV被害者を救済するプログラムを開設する計画を発表した。ドイツでこのような公的サービスが発足するのは初めてで、上記2州は他の州も彼らのあとに続き、州境を超えてサービスを提供できるようになることを期待している。

プログラムの三本柱の1つは、電話とオンラインでのカウンセリングサービスだ。2つめは避難所の建設と、カウンセリングセンターの設立。3つめは、男性に対する暴力に関する「タブーを無くし」「可視化する」ことを目指す。さらにノルトライン=ヴェストファーレン州は2021年に、州立法府に「少年、男性、および(L)GBTTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスセクシュアル、トランスジェンダー、およびインターセクシュアル)」に対する暴力と戦うためのアクションプランを提出する予定だ。

モーゲンスタン陽子

最終更新:6/21(金) 18:49
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