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【消えゆく鉄道遺産】「幻の橋」タウシュベツ川橋梁の“崩壊美”

6/21(金) 7:30配信

現代ビジネス

朝ドラ『なつぞら』の舞台、十勝に架かる橋

 北海道・大雪山国立公園に残る、朽ちたコンクリートアーチ橋が注目されている。

 地元ガイドセンターが主催する見学ツアーに参加しなければ近づくこともままならないうえ、ツアーのスタート地点まで最寄りのJR駅からバスで片道1時間半以上。そのバスも1日にわずか4往復というハードルの高さにも関わらず、全国各地からこの橋を訪れる人の数は、ここ数年、右肩上がりだ。

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 今年、NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』の舞台にもなっている北海道・十勝。別名「幻の橋」とも呼ばれるコンクリートアーチ橋「タウシュベツ川橋梁」は、その土地の北端に位置している。

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 かつて、十勝地方のほぼ中央にある帯広市から、大雪山公園の山岳地帯に向かって北上する鉄路があった。1987(昭和62)年に廃線となった旧国鉄士幌(しほろ)線だ。帯広~十勝三股(とかちみつまた)間を結んでいた路線の廃線跡に残されたタウシュベツ川橋梁は現在、数奇な運命を経て、水没と出現とを毎年繰り返す「幻の橋」となっている。

水没と出現を繰り返す

 ここでまずは、鉄道橋として造られ、「幻の橋」と呼ばれるのに至るタウシュベツ川橋梁の歴史を、かけ足で振り返ってみたい。

 1930年代後半、士幌線には、大雪山国立公園の山中にコンクリートアーチ橋が数多く建設された。鉄筋ではなくコンクリート造りのアーチ橋となった背景には、建築資材を輸送することが困難かつ、風光明媚な国立公園が立地だったことがある。こうした条件への配慮から、現地調達が可能な石や砂利を活用したコンクリート工法と、景観に調和するアーチ構造が採用されたことが、当時の記録から伺える。

 そのようにして建設された橋梁群のひとつが、タウシュベツ川橋梁だ。全長130m、径間10mのアーチを11持ち、旧国鉄士幌線の廃線跡に現存する中では最長かつ、アーチの数も最多を誇る。

 竣工は1937(昭和12)年。これはNHK『なつぞら』に詳しい方ならお気づきのように、奇しくも主人公・奥原なつの生まれ年だ。

 それはさておき、1937年に完成した橋は、けれども1955(昭和30)年に鉄道橋としての役目を終える。

 その年、水力発電に供する水を貯めるために糠平ダムが建設され、タウシュベツ川橋梁を含む士幌線の一部はダム湖に水没することになった。ダムの完成とともに誕生した糠平湖に沈む鉄路は湖の対岸へと移設され、列車が通らなくなった橋は、そのまま取り壊されることもなく放置された。以来、タウシュベツ川橋梁は永く水の底に――とはならなかった。

 発電に水を使用する糠平湖では、電力需要に応じて、1年を通じて水位が30m近く上下する。秋の終わりに満水となる湖は、冬の発電で水位を下げ、春先から再び雪解け水と雨水とを貯めていく。こうしたサイクルによって、誰の目にも止まることなく水没と出現を繰り返す「幻の橋」は誕生した。

 糠平ダム完成から60年以上、現在に至るまで、タウシュベツ川橋梁は水没と出現を毎年繰り返している。

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最終更新:6/21(金) 13:30
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