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乳がん・卵巣がん… 血液一滴で見逃さない

6/22(土) 7:47配信

NIKKEI STYLE

わずか1滴の血液や尿から早期のがんを発見する――。そんながんの検査が早ければ2020年にも一部の人間ドックや健康診断で受けられるようになりそうだ。痛みや放射線被曝(ひばく)のある精密検査を受ける前に、がんの可能性をある程度見分けられる。がんの見落としを防いだり、過剰な検査を省いたりすることにつながる。「痛い」「面倒くさい」といったがん検査のイメージが大きく変わりそうだ。
「がんの可能性を言い当てる能力の高さに驚いた」。国立がん研究センター中央病院消化管内科の加藤健医長は、研究に加わっているがん検査技術の威力をこう話す。検査を受けた人のほんの少しの血液を調べることで、乳がんや大腸がん、卵巣がんなど多くのがんを95%以上の精度で発見できた。鍵を握るのはがん細胞が血液中に放出する「マイクロRNA(リボ核酸)」と呼ぶ物質だ。
血液によるがんの検査としては、腫瘍マーカーが広く使われている。がんにかかると血液中に増える特定のたんぱく質や酵素を調べる検査だ。ただ「がんの早期発見という目的では使っていない」(加藤医長)。
例えば胃がんや大腸がんなどの検査に使うCEA(がん胎児性抗原)は「進行がんでも3~4割の患者しか値が上昇しない」(加藤医長)という。そのため、腫瘍マーカーは主に治療効果を確認したり再発の有無を調べたりする目的で使われている。
この限界を克服するために期待されているのが、血液中のマイクロRNAを調べる方法だ。マイクロRNAは遺伝子の働きにかかわる物質で、体内に約2600種類存在する。そしてがんは早期から、特定のマイクロRNAを分泌することで増殖したり転移したりしている。国立がん研究センター研究所の落谷孝広客員研究員が中心となり、その仕組みを研究してきた。
血液中にどのマイクロRNAが増えているかを調べれば、がんの有無やがんができた臓器を早い段階から予測できる。必要な血液量は50マイクロリットル程度と1滴分だ。この検査でがんの可能性が高ければ、内視鏡検査やコンピューター断層撮影装置(CT)検査で詳しく調べればいい。
落谷氏らは、14年から国立がん研究センターが保存する数万人分のがん患者の血液で効果を確かめた。乳がんで5種類、胃がんで4種類といったように、各臓器のがんで鍵を握るマイクロRNAを特定することに成功。遺伝子解析チップで、マイクロRNAの血液中の量を測ることで各がんを発見できるかを調べた。
この結果、多くのがんを「ステージ(進行度)にかかわらず95%以上の感度で検出できた」(落谷氏)。ステージゼロと呼ばれる、粘膜内にとどまり内視鏡で切除できる早期がんも見逃さなかった。「便潜血検査でも見つかりにくい場所にできる大腸がんも、精度良く検出できた」(加藤医長)という。
新たにがんと診断された3000人の血液でも精度を確かめた。この結果をもとに、研究に参加した企業が、検査キットの製造販売承認を19年内にも厚生労働省に申請する。承認されれば、20年にも一般の人の検査に使えるようになるかもしれない。
落谷氏は、人間ドックなどの健診で受けられるように関連機関などと話を進めているという。当面は数万円の費用がかかりそうだが、将来は公的保険が適用されて安くなる可能性もある。
この検査はがんの発見に加え、がんが疑われたときに精密検査をするかどうかの判断材料にも使えそうだという。例えば前立腺がんでは、腫瘍マーカーが陽性だと前立腺に針を刺して組織を取る生検をすることがある。血尿が出るなど苦痛を伴う検査だ。マイクロRNAを使えば腫瘍マーカーが陽性でも「がんのリスクが低く生検を省ける人を見分けられる可能性がある」(落谷氏)。
現状ではがんと良性病変を区別できないケースもある。人工知能(AI)で数百種類のマイクロRNAを解析することで解決できる可能性があるという。
採血さえ不要な、尿からがんを発見する技術の開発も進んでいる。実はマイクロRNAは血液だけでなく、尿や涙などさまざまな体液に含まれる。これに着目し、尿中のマイクロRNAでがんを発見する技術を名古屋大学発スタートアップのイカリア(東京・文京)が開発中だ。尿に含まれるマイクロRNAは血液中よりも少ないため、これを捉える構造のチップを独自開発した。大阪大学と研究を進めており、肺がんなどを高感度に検出できているという。
微生物の一種の線虫を使って尿からがんを発見するアイデアもある。HIROTSUバイオサイエンス(東京・港)が開発を進めている。線虫はがん患者の尿の臭いに引き寄せられる性質があり、これを利用する。医療機関と協力して約1400人分のがん患者の尿で検証した。胃がんや大腸がんなどを90%前後の精度で検出できたという。
これらの技術は20~21年ごろの実用化を目指している。大規模な臨床研究などで有効性が証明されれば、がん検診の項目に加わる可能性もある。
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最終更新:6/22(土) 10:12
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