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祈りの場か、観光地か…ノートルダム大聖堂がいま直面する「難題」

6/22(土) 10:00配信

現代ビジネス

集まらない寄付金

 パリのノートルダム大聖堂の火災から2ヵ月が過ぎた6月15日、被災した大聖堂の中で初めてのミサが行われた。

 30名ほどの聖職者が出席。白い式服に安全ヘルメットを装着していたのが印象的だ。

 このミサは、ノートルダム大聖堂の復旧に向けた象徴的な第一歩であるが、同時にさまざまな問題が浮き彫りになってきた。

 火災直後から大企業や富豪が競うように寄付を申し出て、その額が1000億円を超えたことは記憶に新しいだろう。

 ルイ・ヴィトンやディオールを運営するLVMHグループは約250億円、グッチの親会社も100億円超の寄付をすると報道された。

 環境問題や貧困問題など金を使うべき案件は他にもあるといった批判もあったが、全般的には好意的に受け止められていたように思われる。

 しかし、実際には寄付金の集まりは悪いようだ。AFP通信の報道によれば、事故後2ヶ月たって支払われた寄付金は約10%(約97億円)であり、その多くは個々人による小口の寄付やアメリカからの寄付だという。

 たしかに大きな金額だが、特殊技術を用いた長期間にわたる復旧作業にともなう予算としては十分ではないだろう。

 一部では、寄付の申し出自体が売名行為や節税目的であったという見解もあるが、それほど単純ではない。

 問題は何を目的に誰が主導して復旧するのかということ、つまりは、現代社会にとって教会という場をどのようにとらえるのかということとかかわっている。

社会と教会の関係性

 大聖堂の火災後、マクロン大統領の反応は素早かった。

 すぐに現場に駆けつけ、5年以内の復旧をテレビカメラの前で約束してみせた。もちろん、2024年のパリ・オリンピックに間に合わせるためだろう。

 フランスの道路網の起点も大聖堂前にある。マラソン競技などの舞台としてどのように使うか、簡単なイメージくらいはあるのかもしれない。

 さらに、焼け落ちた尖塔や屋根について新たなデザインを世界中から公募するというフランス政府の発表は衝撃的だった。

 前回の記事(「フランス人の『教会離れ』をどう考えるか」)で述べたとおり、ノートルダム大聖堂の建築やデザインは不変ではない。今回焼失した尖塔も、19世紀半ばの大規模修復の際、建築家ヴィオレ=ル=デュクが想像力も駆使して創り出したものだ。とはいえ、基本的な教会建築の文法やイメージは踏襲されていた。

 一方、今回は、フランス政府は、現代の技術に見合った新しくより美しい尖塔を募っている。そして、イギリス人建築家による太陽エネルギーを利用できるデザイン案、イタリア人建築家によるバカラのクリスタルで尖塔と屋根を覆う案、フランス人デザイナーによる尖塔の代わりに火事のときの炎のモチーフをすえようという案など、大喜利状態になっている。

 もちろんこれら全てが応募されるわけではないだろうし、どのようなデザインになるかはまだわからない。だが、メディアをかけめぐる奇抜としか言いようのないものも含まれたデザイン案が、富裕層の巨額寄付を鈍らせているとも考えられる。寄付金が何にどう使われるのかが不透明なのである。

 しかし、より重大なのは社会と教会の関係性だろう。

 前回大規模修復が行われた19世紀半ばは神と教会を信じる人がマジョリティだった時代だ。教会への寄付は善行であり、救済に近づくことであった。

 だが、現在ではそのように信じる人は圧倒的なマイノリティになっているのである。

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最終更新:6/22(土) 10:00
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