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「おひとり様高齢者」の田舎暮らしが増加中 介護放棄の“姥捨山”という現実

6/23(日) 6:00配信

デイリー新潮

結局は孤独死? 

 別荘地なら管理事務所があるので安心、と考えるのも早計だ。お金さえ払えば大抵のことはやってくれる管理事務所であっても、生活の隅々まで面倒を看てくれる介護ヘルパーではない。そもそも、そういう技能を持った人間をスタンバイさせていることはまずない。

「部屋の中で転倒して助けを呼べなければ、どうしようもありません」(管理事務所の従業員)

 家政婦を雇うことができるほどの経済力を持つ高齢者なら、わざわざ田舎暮らしなど必要ない。都会に近い富裕層向けの特養や高齢者施設に入居するからだ。

 息子や孫に“楢山節考”さながらに車で連れて来られる老女たちは、そもそも生活に余裕がない。その結果としてトラブルが起きているという側面も否定できない。ひと頃、孤独死対策に追われた行政にとっても、新たな悩みの種になっているという。

「90歳近い女性となると、スマホの操作はできません。たとえ“らくらくホン”であっても、『どこに置いたかな?』という具合です。緊急連絡手段であるスマホの置き場所でさえ忘れてしまいます。そんな高齢者をひとりで置き去りにするわけですから、家族は一体、何を考えているのかと思います」(さる民生委員)

 だが、安ければ200万円で小さな家が手に入る。都会であてのない特養入居の順番を待つよりも、家族にとって田舎暮らしは安上がりで簡単だ。それが“老女のおひとり様”田舎暮らしの現実なのだ。

 移住者自身の問題もある。彼女たちは、プライバシーに敏感な都市生活を当たり前として生きてきた。そのため、認知症の兆候が出始めても、移住先の保護、見守り、民生委員のケアを受けたがらないという。「私の生活に決して立ち入ってくれるな」という結界さながらの生活。その上、認知症の病状が進行し、結局、自分で自分の首を絞めることになるという。

 既に“限界集落”ならぬ“限界生活者”が続出している。子や孫に移住を勧められた老女たちでも、元気なうちに地元の人々と人間関係を築いていれば、話は別だ。

 しかし、多くの老女たちは孤独な生活を続け、認知症が進んでも最後まで「かまってくれるな」なのである。とはいえ、必要な時は「すぐに助けに来い」だ。別荘地の管理事務所は対応に苦慮している。物理的、身体的な限界状況に加えて、老齢ゆえの頑固さ、頑迷さが、地元民からの助けを妨げているという。

 こうした田舎における新しい不動産ニーズは、新たな商機と言えるかもしれない。だが、「現代の姥捨て山」ならば対策を講じる必要も出てくるだろう。

 別荘の管理事務所や不動産会社は、「ひとり暮らしの高齢女性に何かアクシデントが起きたら、人道的には助けざるを得ない」と考えている。

 しかし、高齢者の介護を担っても、その費用を請求するわけにもいかない。老女たちから「カネがない」と言われればそれまでだ。結果として、管理事務所などは無報酬で手助けをしなければならない。人手も時間も割かれてしまう。

 田舎で不動産の売買契約が増加することは、業者だけでなく、地域全体として歓迎すべきことだろう。「85歳以上の入居は不可」、「ひとり暮らしの入居不可」という条件を設定するわけにもいかない。物件成約のためには、売れる時には売らざるを得ないのが実情だ。

取材・文/清泉亮(せいせん・とおる)
移住アドバイザー。著書に『誰も教えてくれない田舎暮らしの教科書』(東洋経済新報社)

週刊新潮WEB取材班

2019年6月23日 掲載

新潮社

2/2ページ

最終更新:6/23(日) 12:16
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