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あなたの愛する人に贈るべき本

6/23(日) 7:00配信

Book Bang

物理学の法則がビジネスを正しく加速させる

 現代のコペルニクスやアインシュタインを挙げるとすれば、それはエイドリアン・ベジャンである。通例、革新的な法則を打ち出した場合、当初はほとんど見向きもされず、素通りされてしまう。ベジャンの法則も例外ではなかった。しかし昨年、ベジャンが米国版ノーベル賞と言われるベンジャミン・フランクリン・メダルを受賞していることからわかるように、今ではコンストラクタル法則は物理学から芽吹いたひとつの潮流とまでみなされるようになった。これから大樹に育つであろうことは想像に難くない。

 物理学の話なら自分には関係ないと思わないでいただきたい。
 河川の流域、雪の結晶、スポーツにとどまらず、本書では「富」や「経済」「社会」にも触れられており、マーケティングを生業にしている私もこの法則からは逃れられない。ビジネスで難しい決断が要されるとき、賢人は古(いにしえ)の書物、たとえば『論語』に戻るとも言われるが、今の私であればコンストラクタル法則に基づいて考える。
 もちろん、人間関係のような問題であれば『論語』の範疇だろうが、高度に情報化された社会において、システムをいかに構築し、一時的な変化に惑わされることなく、「流れ」を正しく見極めるには、『論語』では足りない。
 私は昨年、1年かけて開発してきた大規模システムの導入を、リリース直前で急遽中止する判断を下した。自然の摂理を考えたとき、そのシステムが時代の流れていく方向に、もはや合わなくなったと判断したからだ。当然、社内や取引先は騒然となった。しかし3カ月もしないうちに結論が出た。コストと開発スピードが劇的に改善し、方向転換した判断の正しさが証明されたのだ。
 世に溢れる知識の中で、コンストラクタル法則ほど本質的な判断を助けてくれる知見は他にないと実感したものだ。

 さらに本作は、「1人当たりGDPと幸福度の関係性」「競争力と1人当たりのエネルギー使用量には相関関係がある」など、ビジネスリーダーにとっても必要な「経済や富」に関するまったく新しい視点を提示する。幸福度や豊かさがエネルギーの消費量と相関関係にあるというのは、一見、持続可能性を重視する現代の潮流と反する。しかし、ベジャンは個人の見解を述べているのではなく、物理法則によって導かれる帰結を述べているのだ。
 そして、人間と機械が一体化して進化を続け、宇宙空間へ進出していくことや、水やエネルギーが枯渇することはない、世界が制御不能になることもないと、楽観的な見方をしている点もまた本書の特徴だ。
 こうした新しいデザインを促すための知見が、日本では改元のタイミングで翻訳が刊行されたというのは非常に大きな意味があるのではないか。これからの未来に、大きな流れを生み出したいすべてのリーダーにお読みいただきたい本である。

[レビュアー]神田昌典(経営コンサルタント)
経営コンサルタント・作家・マーケッター。アルマ・クリエイション株式会社代表取締役。 日本最大級の読書会を運営する「一般社団法人リードフォーアクション」代表理事。著書に『インパクトカンパニー』『都合のいい読書術』(PHP研究所)、『人間学×マーケティング』(池田篤史との共著、致知出版社)、『稼ぐ言葉の法則』(ダイヤモンド社)ほか多数。

紀伊國屋書店 scripta 2019年6月23日 掲載

紀伊國屋書店

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最終更新:6/23(日) 7:00
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