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松坂桃李も、この脚本に衝撃を受けた――。政府の不都合な真実を攻める、忖度知らずの『新聞記者』。

6/24(月) 19:04配信

Pen Online

自国の大統領に批判的なアメリカの実話もの映画を観るたびに、「なぜ日本ではこういう映画が生まれないのだろう?」という不満を感じてきた人も少なくないのではないでしょうか。つくり手側の権力に対する忖度なのか、観る側が政治に関心が薄いと思われているからなのか――。そんな現状を一気に打破するような骨太な作品『新聞記者』が公開されます。

パウダー・スノーの銀世界を、リーアム・ニーソンが血で染める雪国サスペンス。

東都新聞の社会部記者、吉岡エリカのもとに届いたのは、医療系大学新設に関する極秘文書。許認可先の内閣府を調べはじめると、キーパーソンである神崎が自殺してしまいます。同じ頃、神崎の外務省の後輩でいまは内閣情報調査室に出向している杉原拓海は、政権を守るための情報操作ばかりの任務に倦んでいました。けれども神崎の死を通して、官邸が進めているありえない計画を知ることになります。

進行中の現実であることも否定できない恐ろしさ

原案は東京新聞・望月衣塑子の同名ベストセラー。政府の“不都合な真実”を暴くために取材を続ける彼女のスタイルに示唆を受け、脚本が練られたといいます。フィクションではありますが、大学の新設をめぐる疑惑をはじめ、描かれているのは現実のニュースを想起させるものばかり。青みがかった薄暗い部屋で、世論をコントロールするために官僚たちが無言でパソコンを叩き続ける姿はディストピアのようでもあるけれど、いままさに進行中の現実であることも否定できない恐ろしさを感じました。

吉岡は父親の死に関して心に傷を抱え、杉原は生まれたばかりの子どもの安全を守りたいと切実に感じています。真実を追うふたりが決してヒロイックな人物ではなく、親を思い、子を思う当たり前の幸せを願うひとりの生活者であることで、物語に説得力が生まれているのです。

松坂桃李は最初に脚本を読んだときに「こんなに攻めた映画をつくるのか!」と衝撃を受けたと語っています。『新聞記者』のような作品が当たり前につくられるようになったときこそが、本当の夜明けなのかもしれません。

『新聞記者』

監督/藤井道人
出演/シム・ウンギョン、松坂桃李ほか
2019年 日本映画 1時間53分 
6月28日より新宿ピカデリーほかにて公開。
http://shimbunkisha.jp

文:細谷美香

最終更新:6/24(月) 19:04
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2019年 09月15日号

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