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【書評】分断された日本の中国論に橋をかける:高口康太編著『中国S級B級論』

6/24(月) 15:30配信

nippon.com

野嶋 剛

中国をどう見るかはとても難しい。中国崩壊論もあれば、中国礼賛論も見かける最近の日本における中国論マーケットだが、S級とB級が混在する中国の複雑な事情を知ることで、中国理解はもっと容易になるのではないだろうか。

超一流と二流が同居する中国

本書のタイトル「中国S級B級論」には、ちょっとした仕掛けがある。このタイトルをみて、すぐにピンとくる人は多くないはずだ。だが、このタイトルの意味さえしっかり理解すれば、本書の意図するところは、ほとんど伝わる。

S級とB級は超一流と二流(あるいは三流)ということ。いまの中国にはS級の部分とB級の部分が同居しており、その間に巨大な落差がある。日本はS級でもなくB級でもなく、均質的なA級(いちおう一流としておく)社会なので、中国のその落差が体感的に理解しにくい。

だから、日本の対中観は、大まかにいえば、下から目線の「中国すごい論」と、上から目線の「中国ダメだ論」の2つのイメージに分かれてしまう。本書の編著者であるジャーナリストの高口康太は「(中国にS級とB級の)どちらでもあるが正解」と指摘する。すごい論とダメだ論のどちらも間違いではないのだが、どちらもなんとなくしっくりこないのはそのためだ。

国によって発展の道は決して同じではない。日本は割とスムーズにB級からA級にステップアップし、S級になろうかというところでバブル崩壊、金融やITの世界的な競争にも乗り遅れ、少子高齢化を迎えて成長は打ち止めとなった。

しかし、中国は、B級からS級への一気のジャンプを果たそうとしているようにも見える。それは、カエルがぴょんぴょんと石を跳び越えていくことに例えて、リープフロッグ(かえる跳び)現象と呼ばれるという。例えば、中国社会は固定電話からスマホへ、ではなく、固定電話もないところにいきなりスマホ社会が普及した。QRコードを用いたキャッシュレスの決済システムの普及もクレジットカード普及より先に進んだ。個人的にも、「いいね」と広告によってブログの文章で数千万円を稼げるビジネスモデルを確立した中国は、安い原稿料に苦しんでいる私たち日本の書き手にとっても、S級の理想世界に見えるときがある。

だが、すべてがS級かといえばそうではない。まだまだ「後進性」を感じさせる部分は多々ある。つまり、S級もあれば、B級もあって、中国はまだら色なのである。「先進国・中国」と「発展途上国・中国」の両面の情報が錯綜し、立場(つまり持ち上げたいか、ディスりたいか)によって、描かれる様相がガラッと変わってしまうのだ。

そんな両極端の中国論のギャップをなんとか接着させ、分断された両極端の中国論にブリッジをかけようという試みが、5人の中国通の書き手による本書の要点である。

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最終更新:6/24(月) 15:30
nippon.com

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