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60歳を過ぎてハワイ進出した寿司職人は人生の先輩 | 小山薫堂

6/25(火) 20:00配信

Forbes JAPAN

放送作家・脚本家の小山薫堂が「有意義なお金の使い方」を妄想する連載第46回。ハワイ3泊4日の出張前に起きた個人的な事件と、60歳を過ぎてワイキキに寿司店を出した人生の先輩にあらためて感じたこと。

iPhoneを新幹線のゴミ箱に捨てた。もちろんワザとではない。僕は普段から忘れ物が多いので、その日も見やすい位置にずっと置いていた。そして新横浜駅で降りようとバッグを肩にかけ、軽食のゴミを手に持ち、iPhoneも持ち……、しかし降りた瞬間iPhoneは消えていた。慌てて席に戻るも見当たらず、FMヨコハマ「Futurescape」の生放送が9時に迫っていたので品川駅まで乗っていくわけにもいかず、仕方なく降りた。新幹線が行ってから、ゴミと一緒に捨てたかもしれないことに気がついた。駅員にそう説明すると、「東京駅に着いた時点で確認します」という無情な返事が。しかもその場にいないとセンター保管になるかもしれないというので、遅刻を覚悟で連絡を待つも、「ありませんでした」と言われてしまった。

意気消沈でスタジオに入った僕は、iPhone紛失をネタにしつつ、「iPhoneを探す」という機能を使ってみた。すると、大井町の車両基地(にたぶん停車中の新幹線車内)にあることが判明! オンエア終了後に飛んでいったのだが、警備員曰く「車両基地に人は通せません」。夕方になって、僕のヨミどおり新幹線のゴミ箱から発見されたと連絡があったが、「引き渡しは規則上、明日以降になる」ということで、翌日から3泊4日のハワイ出張を控えていた僕は、26年間使ってきたガラケーを泣く泣くスマホに替えた。地図やメールチェックなど、海外ではスマホが欠かせないからだ。

もちろん、忘れた(というかうっかりゴミ箱に捨てた)僕がいちばん悪い。でも、顧客視点に立って考えたら、どこかの時点で当日中に渡す手はずというものをJRも考えてくれてもいいのではないかと思う。大井町の車両基地の警備員は「最近スマホの機能で探し当てて、ここに来る人が多いんです」と言っていた。だったらスマホを探してくれるJRの社員をひとり置いてくれてもいいのになあと。

その一方で、ゴミ箱に捨てたのに戻ってくる日本というのもあらためて素晴らしいなと思った。海外だったらまずあり得ないだろう。以前、ニューヨークに着いた便で、愛着のある文庫本を機内のシートポケットに置いてきたことがあるのだが、残念ながら出てこなかった。日本着の便だったら確実に出てきたに違いない。「紙クズはもう一泊します。」という帝国ホテルの名キャッチコピー(1979年)に代表されるように、日本の「おもてなし」は、人に喜んでもらう視点だけでなく、困った人のために何をしてあげられるのかという視点でも成り立っているのだなと考えさせられる。

日本の技術で新しい寿司を

さて、ハワイのお話を。3月4日、ハワイ大学ケネディシアターでの公演「2019ホノルル歌舞伎~ハワイ日系移民150周年事業~」を拝見した。僕がこの公演に関わりがある理由は連載第38回にあるので割愛するが、最初の移民社「元年者」への追悼と供養、この150年という時間に敬意を表して捧げられた歌舞伎はたいへん素晴らしく、クライマックスには胸を打たれた。

また、僕は昔からハワイが大好きなのだが、“日本人が過ごしやすい便利で快適なハワイ”は、150年前に移り住んだ僕たちの先祖が長年かけて構築してくれたものであり、僕たちはその恩恵にあずかっている──そんなことも感じさせてくれた。

そんなハワイに行くと必ず訪ねるのが、ワイキキのリッツ・カールトン・レジデンスにある「すし匠」だ。江戸前寿司屈指の職人として名を馳せた中澤圭二さんが、東京・四谷の「すし匠」を後進に任せ、ワイキキに出店したのは2016年9月、なんと60歳を過ぎてから。海外で高級寿司店を営む職人の多くは築地(いまなら豊洲)から魚を取り寄せるが、中澤さんは主にハワイ近海やアメリカ本土の素材を多数使う。

ローカルフィッシュ「オパ」を酒粕と味噌につけて焼いたり、同じくローカルフィッシュで王族が昔好んで食べていたという「モイ」を塩麹に2週間寝かせたり。ガリの代わりはなんと刻んだヤシの新芽(ハーツ・オブ・パーム)。これまで地元住民が食べなかった魚やおいしいと思っていなかった魚を、日本の寿司の技術によっておいしくする。それによって海洋資源を増やし、日本の魚の高騰も防ぐ──それはなんと志の高い試みなのだろうか。

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最終更新:6/25(火) 20:00
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