ここから本文です

岡田准一主演「白い巨塔」原作からカットされたあのシーンが「めちゃめちゃ面白い」

6/26(水) 16:00配信

Book Bang

■半世紀前の原作が何度もドラマ化できる理由

 財前が悪役なのは、卑怯な手でライバルを蹴落とすからではない。「医者が患者を見ていない」からだ。半世紀前の作品が現代でも通用する理由はここにある。社会のための職に就いた人が、金や権力や保身のために本来守るべき信義を簡単に捨てる、むしろ弱者を踏みつける構図は、いつの世も存在する。患者を見ない医者、国民を見ない政治家、消費者を見ない企業、真実を見ないメディア。逆らう声は封じられ、泣き寝入りを強いられる。そんな話はごろごろある。

 ドラマを見て、原作を読んで、あなたは「医学界って怖いなあ」と思っただろうか? むしろ「舞台は医学界だけど、他の世界でも同じことはあるよなあ」と感じたのではないだろうか。『白い巨塔』が時代を超えて読み継がれるのは、そんな不変の人間の業と社会の姿を描いているからに他ならない。だから物語を改変する必要がないのである。

 とはいえもちろん、前述したように医療技術については時代ごとに変えられているし、生活描写も1960年代のままではない。原作小説を読むと身長や体重の描写には尺貫法が用いられ(財前は五尺六寸=約170センチ)、1ドルは360円だ。財前の舅がばらまく賄賂の金額は、今の感覚に合わせるなら脳内で10倍に変換するといい。また、ドラマでは病名を患者に告知していたが、それはインフォームド・コンセントが一般化した現代だからこそで、原作の時代には決して患者に伝えなかった。これが今回のドラマと原作の終盤の描き方の違いにつながっている。

 そういうところに注目して原作を読むと、まるで昭和の時代小説を読んでいるようでとても興味深い。だがもうひとつ、ぜひとも原作を読んでほしい理由がある。今回のドラマ化で大幅にカットされた法廷劇が、原作ではめちゃくちゃ面白いのだ。『白い巨塔』は社会派小説であるとともに、実によくてきたリーガルサスペンスなのである。意外なところに証拠となるものが隠されていたり(ドラマの「証拠」は原作と異なる)、思いもしなかった観点からの証言があったり。特に鑑定合戦はドラマでは全く出てこなかったので、ぜひ原作でご確認を。

 それにしても、続編は予定外だったはずなのに、正編の描写がちゃんと伏線になっているからビックリする。自分で書いた作品の結末をひっくり返すはめになり、その手がかりを自著の中から懸命に探す様子を想像すると、なんだか少し微笑ましいぞ。

2/3ページ

最終更新:6/26(水) 16:00
Book Bang

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事