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岡田准一主演「白い巨塔」原作からカットされたあのシーンが「めちゃめちゃ面白い」

6/26(水) 16:00配信

Book Bang

■岡田くんは「悪い顔」を演らせたらジャニーズ随一だ! 

 いやあ、しかし岡田くん、悪いヤツだったねえ(喜)! そもそも『白い巨塔』の、特に正編部分は悪いやつばっかり出てくるわけで、名だたる名優たちがこぞって「誰がいちばん悪い顔ができるか選手権」をやっているようなものである。もう右も左も悪い悪い。そんな中で、父を医療ミスで亡くした青年を演じたSnow Manの向井康二くん、よく頑張った……怖かったろうに……中でも岡田先輩の「悪い顔」がいちばん怖かったろうに……。

 特に印象的だったのは、財前が部下の医者・柳原にカルテの改竄を迫る場面だ。笑いながら迫るんだよ! でも目が笑ってないんだよ! こわいよーーー! あの怖い笑顔、どっかで見た……と思って気がついた。「軍師官兵衛」で織田信長が死んだと聞いて嘆く秀吉に、好機到来とばかりに笑いながら詰め寄る官兵衛の顔だ。財前から溢れ出る黒田官兵衛み……。あれがV6に戻るとばりばりの末っ子で、枚方に戻ると超ひらパー兄さんになるの、ほんとすごいと思うの。

 原作の財前は、ドラマよりもっと悪い。映像化された財前は最後に人間らしいところを見せて荘厳なヒューマンドラマに昇華されがちなのだが、原作ではそこまでの変化はない。親子の情や愛人への思慕がわかる場面もない。残す手紙の内容ももっと事務的だ。「本当はいい人なんだよね」でも「悪人が見せる寂しさにキュン」でもなく、最後まで「懲りねえやつだな!」という感じで、感動というよりも、ずしっとした重さが残るのだ。うん、それがドラマと原作のいちばん大きな違いかも。原作を読むと、ダーク岡田を10割増しで楽しめるよ。

 ただ原作でも、財前の中に改心の種らしきものが蒔かれる場面がある。ドラマではカットされていたが、ドイツでアウシュビッツを、日本で黒部第四ダムを見学する場面だ。命について財前が少しだけ考える。あくまでも少しだけ。そして死を前にしたとき、その記憶が財前の中に残っていたことがほのめかされる。山崎豊子の小説は決して親切ではない。わかりやすいカタルシスは与えない。だが読者が考える材料だけはたっぷりくれる。だから受け止める側も、しっかり考えなくてはならない。財前は最後に反省したのだろうか。それとも変わらないまま「勧善懲悪」としての結末だったのだろうか。原作を読んで、ぜひ考えてみていただきたい。

 最後に本編と直接関係のない感想をふたつ。医者の役では岡田くんご自慢の格闘技術は使いどころがないねえ、と思っていたらまさかのラブシーンで格闘術が大活躍したのには笑った。そしてもうひとつ、冒頭にテロップで入る脚本家チームの名前の「本村拓哉」に毎回ビクッとしてたの、私だけじゃなかったよね? ね? 

大矢博子
書評家。著書に「読み出したら止まらない! 女子ミステリーマストリード100」など。小学生でフォーリーブスにハマったのを機に、ジャニーズを見つめ続けて40年。現在は嵐のニノ担。

新潮社

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最終更新:6/26(水) 16:00
Book Bang

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