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「宝の山」専門商社の生き残り策に学ぶ(苦瓜達郎)

6/26(水) 7:10配信

NIKKEI STYLE

今回は一見地味な、しかし実は「宝の山」である専門商社を取り上げたいと思います。初めて聞く会社名もあるかもしれませんが、是非参考にしてみて下さい。

■「商社不要論」が叫ばれたが…

いわゆる「商社不要論」が言われ出したのは、もう40年近く前のことです。物流技術・情報技術の進歩によりメーカーと顧客が直接取引を行いやすくなり、売買の中間に立ってマージンを取るだけの商社は衰退して直接取引に移行していく――、そんな考え方です。

しかし、現実の世界をみると、その後逆に多くの分野で商社の存在価値はむしろ高まっています。商社がどのように自社の存在価値を高めていったか、パターン別に個社名とともに説明しましょう。

■専門商社の武器(1) 技術力

第一のパターンは技術力での顧客支援です。多くの専門分野では、単に商品を入手するだけではなく、それをどう使うかが鍵となるケースがみられます。そういった分野では、メーカーよりも顧客に近い立場で商品に関する技術的支援を行うことで、両者の満足を勝ち得て、マージンを獲得し続けることが可能になるのです。

このパターンの代表例としては、輸入半導体・ネットワーク機器商社のマクニカ・富士エレホールディングスが挙げられます。技術的支援を武器に海外メーカーと顧客、双方の満足を獲得し、時にはメーカー主導による商権の移動に関わりシェアを高め続けています。

■専門商社の武器(2) 情報力+資金力

第二のパターンは、情報力と資金力を武器にM&A(合併・買収)によって事業を拡大することです。大手商社で目立つのは鉱山権益への投資ですが、専門商社の場合は自社のカバー領域の中小メーカーへの投資が有効になります。

中小メーカーのM&Aで異彩を放つのが、非鉄金属商社のアルコニックスです。同社は、技術力・収益力に優れているものの事業展開能力に欠けている下請け加工メーカーを買収。自社のネットワークを活用して顧客基盤を拡大するというパターンで拡大・成長を続けています。

■専門商社の武器(3) インフラ特化

第三パターンは、純粋に在庫機能・物流機能に磨きをかけ、業界に不可欠なインフラとしての地位を確立することです。どれだけ物流技術や情報技術が進歩しても、複数メーカーの商品を一括納入することは商社にしかできませんし、即納という点でも全国に物流拠点網を築いている商社が有利です。

物流機能で業界を圧倒している企業としては、日用雑貨卸のパルタック、機器工具卸のトラスコ中山、ダイワボウホールディングスの子会社であるパソコン卸のダイワボウ情報システム――などが挙げられます。3社とも地味な物流ノウハウを積み上げつつ、拠点網に積極投資を行い続けることで、業界内で圧倒的な存在に育ちました。ダイワボウ情報システムに関しては、メーカーの直販部隊が獲得した案件でさえも、物流機能は同社が請け負うことが増加しています。

この3社に共通しているのは、かつての自動倉庫ブームなどには乗らなかった一方、ここへきて先進的なロボット活用などに乗り出している点です。物流の自動化技術がある程度の汎用性を持つに至ったことや、一段と厳しくなる人手不足が背景と考えられますが、自動化の取り組みが成功すれば、業界内での相対的優位はさらに高まるでしょう。

■株式市場で見落とされている「宝の山」

こういった企業の中には、株式市場で正当な評価を得ているものもありますが、非常に低位で放置されているケースも多く見られます。

さらにニッチ分野の小規模な専門商社に関しては、大半が割安株といっていいでしょう。こういった企業を投資対象として再評価することは、投資家の務めだと考えています。


苦瓜達郎
三井住友DSアセットマネジメントシニア・ファンドマネージャー。1968年生まれ。東京大学経済学部卒業後、91年大和総研入社。アナリストとして窯業やサービス業の担当を経て中小型株を担当。2002年に当時の大和住銀投信投資顧問入社。中小型株ファンドの運用に携わる。

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最終更新:6/26(水) 7:10
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