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「クズ野郎」演じた香取慎吾が醸す中年の狂気と色気

6/26(水) 6:10配信

JBpress

 『下町ロケット』で吉川晃司が白髪ブームを起こして以来、街では白髪を染めない男性が激増。女性でも昨年、近藤サトがグレイヘアを披露し、話題になった。

香取慎吾とリリー・フランキー

 美魔女ブームが去り、化粧品のCMからは嘘のように「アンチエイジング」の言葉が消えた。実際に「若く見えること=美しい」という考えが改まったかどうかはわからない。それでも少しずつだが、日本にも変化が訪れつつある。

■ むくんだ髭面の香取慎吾

 老いることは悪なのか。日本では特にその傾向が強いように思える。「奇跡のアラサー(アラフィフ、アラフォーでも可)」とされる人物が続々、登場し、「実年齢に見えない」と崇められる。よく引き合いに出されるのはフランスだ。チーズやワインといった時間が経つことで味に深みの出る熟成文化を愛する彼らは、年を重ねた成熟した女性の方が好ましいという。日本にもフランスにもいろんな趣味の人がいるので、一概には言えないが、もし日本だったら、マクロン大統領と夫人はあんなに受け入れられただろうか。世界では大ロマンスとして語られている二人のエピソードも日本だったら「マニアック」扱いされて、選挙に影響が出てしまうのではと余計なお世話ながら気になってしまう。

 そんな偏った価値観を吹き飛ばす香取慎吾の衝撃的な姿を『凪待ち』で見た。

 人生に何の希望もなく、ただギャンブルで勝つ、その一瞬のためだけに生きている依存症の男。彼の喪失と再生を描いたヒューマンサスペンス。むくんだ髭面によれよれの服を羽織ったお世辞にもきれいといえない外見にはあの国民的アイドルグループの慎吾ちゃんの面影は微塵もない。

■ 追い詰められ、自暴自棄になり、破滅の道を転がり落ちる

 ギャンブルに明け暮れ、無為に過ごしていた郁男は恋人の亜弓と彼女の娘とともに亜弓の故郷、石巻に移り住む。そこでは亜弓の父が末期がんであるにも関わらず、いまだ漁師をして暮らしていた。心を入れ替え、仕事も真面目にこなしていた郁男。それでも、ギャンブルへの誘惑は耐えがたい。鬱積していくフラストレーション。ある夜、些細なことで亜弓と口論になった郁男は彼女を人気のない場所に置き去りにしてしまい、その結果、亜弓は遺体となって発見される。後悔してもしきれないうえ、周囲から疑いの目を向けられ、追い詰められていく郁男。孤立した彼は自暴自棄となり、破滅への道を転がり落ちていく・・・。

 こんなに「怖い」香取慎吾を見たことがあったろうか。ギャンブルとはこうも人の面相を変えてしまうものなのか。賭けている時の目だけがぎらぎらと光っている鬼のような顔つき。それ以外の時の死んだような表情。俳優、香取慎吾の才能をここのところすっかり忘れていた。慎吾ママや孫悟空、ハットリくん、両さんといったキャラクターの演技が印象的な香取だが、大河ドラマ「新撰組」をはじめ、数々の名作で心に残る演技を見せており、役者としての評価はむしろ高い。

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最終更新:6/26(水) 12:40
JBpress

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